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ハーレーの足まわりを考える【その1】

ハーレー サス カスタム

ハーレーのサスペンションは広大なアメリカ大陸を走るために進化してきた。タイヤがグリップしにくいコンクリートの路面を坦々と長時間走り続けられるよう、疲れにくい乗り心地に特化して進化してきたのだ。対して、ここ日本では道路がアスファルトであることに加え、ワインディングも多く、さらに信号も渋滞も多い街中を走れば、ゴー&ストップを繰り返すことになる。アメリカと日本では、そもそもハーレーの足まわりに求められる性能が違うというワケ。そこで、日本国内でハーレーを安全に走らせるために必要なことを、その筋のスペシャリストとして知られる「サンダンス エンタープライズ」代表“Zak”柴崎氏にうかがった。

ハーレーはフロントブレーキが利かない!?

「ハーレーはフロントブレーキが利かない」というイメージを持っている人は少なくないだろう。そのため、「リアブレーキを積極的に使用して乗るのがいい」と、長年に渡って言われ続けてきた。近年のモデルではだいぶ改善されてきたとはいえ、ちょっと旧いハーレーはそれがとても顕著だったのだ。しかし、バイクはもちろん、自転車やクルマなど、あらゆる乗り物のブレーキは、“フロント7に対しリア3”の割合でブレーキをかけるのがキホン。だが、ハーレーのブレーキをこの割合でかけると最悪転倒してしまう!! ゆえに、ハーレーのブレーキはリアメインで使うのが正しいとされてきたのだ。

バイクのブレーキはフロント7割、リア3割のチカラ加減がキホンということは、誰もが教習所で教わった経験があるハズ。実は、この割合は自転車やクルマも同じ。例えば、自転車をいきおいよく押し歩きしている状態で、前輪のみ、あるいは後輪のみでブレーキをかけてみるとそれがわかりやすい。フロントブレーキのみではしっかりと止まれるが、リアブレーキのみでは止まれないのだ。乗り物とはそういうものなのである。

しかし、フロント7割、リア3割の配分でハーレーのブレーキをかけようと思っても、それは物理的にできない。フロントブレーキを強めにかければ、フロントフォークがギュンと縮んでバランスを崩してしまうからだ。だが、これはブレーキの利きが悪いからそうなるのではなく、すべては足まわりが原因しているのだ。

タイヤの空気圧が高すぎる!!

走行中にブレーキレバーを握ると、まずフロントフォークが沈むと思いがちだが、実はかけた瞬間、まず最初にタイヤが潰れている。その後、初めてフロントフォークが沈むのだ。つまり、タイヤが地面を捉えてからサスが縮み、そうしてから初めてブレーキが利き始めるというワケ。しかし、ハーレーはタイヤの指定空気圧がとても高いため、タイヤが地面を捉えることができずに滑りやすく、それ故にブレーキングで転倒しやすい。

これは騒音規制を考慮し、あらゆるノイズが多い空冷大排気量のOHVを対応させるべく、タイヤが転がることで発生する騒音を抑えるという狙いと、速度規制のないドイツの高速道路「アウトバーン」を長時間走ることも想定し、万が一に備える狙いから空気圧を高く設定しているため。しっかりとブレーキを利かせるには、タイヤの空気圧を適正に見直す必要がある。

走行中にブレーキを握ると、まず最初にタイヤが潰れる。そうしてタイヤが路面をしっかりと捉えて初めてフロントフォークが縮み始めるのだ。しかしハーレーのタイヤはパンパンに空気が入っているために、路面を捉えることができないのだ。そのため、メーカー指定の空気圧よりも低めに設定するのがオススメ。【タイヤもサスの一部】と考えよう。

通常走行時に対し(右)、ブレーキをかけると最初にタイヤが潰れて路面を捉える(左)

サンダンスが提唱する空気圧

【ツーリング】 F:2.1kPa R:2.2kPa (F:2.2kPa R:2.3kPa)

【ダイナ/ソフテイル】 F:2.1kPa R:2.1kPa (F:2.2kPa R:2.2kPa)

【スポーツスター】 F:2.0kPa R:2.0kPa (F:2.1kPa R:2.2kPa)

※()内は二人乗りの場合

タイヤの空気圧は【サスペンションカスタムの第一歩】と考えよう。ベストな空気圧ならブレーキの利き具合はもちろん、カーブの安心感も変わってくる。

ご存じサンダンス エンタープライズ代表の柴﨑“Zak”武彦さんは、ハーレーに関する知識と技術に長け、日本のみならず世界にその名を馳せるエンジニア。エンジンだけでなく足まわりにも造詣が深い

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