鉄馬乗り的 銘品図鑑 BELL「500-TXJ」
世には銘品と呼ばれる優れたプロダクトが、数多く存在している。そんなマスターピースを鉄馬乗りの目線でピックアップ。ハーレーライフをより充実させてくれる相棒になってくれることだろう。今回はBELLの「500-TXJ」をご紹介。
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500-TXJ
2万6400円〜2万8600円
1968年頃の500-TXをモチーフに、当時のフォルムやディテールを限りなく再現しながらも、日本の安全基準であるSG規格をクリアさせた復刻モデル。安全基準をクリアするギリギリのラインまでコンパクトに設計しながらも、奥深く被れる仕様に変更しているので、まるでヴィンテージのような様式美を味わえるのも魅力。オリジナルの3スナップから5スナップに変更することで、フラットシールドの装着が可能に
名作を日本人に合わせてリプロダクト
第二次世界大戦に勝利したアメリカは空前の好景気となり、ゴールデンエイジを迎えた。その結果、多くの人々に経済的な余裕を生み、余暇をより楽しむために様々な娯楽が盛り上がっていった。そのひとつがモータースポーツだ。
これまで交通手段であったモーターサイクルが、レースを楽しむための道具となり、1950年代初頭には、スピードに特化した英国車が台頭。ハーレーも1954年にスポーツスターの前身となるKモデルを発表するなど、当時のレースシーンにアプローチしていく。
そんなスポーツバイクが盛り上がる一方で、大きな問題となったのが、その安全性。サーキットでは頭部損傷による大事故が頻繁に起こっていた。そんな状況を危惧したのが、ベルオートパーツ社のロイ・リクターである。 自身のレースチームを持っていたロイ・リクターは、より安全なヘルメットの必要性を感じ、1954年にヘルメット部門を設立。彼は世界中のあらゆるヘルメットを収集しながら、同時に研究を重ねていった。試行錯誤を繰り返し、第一作目として生まれたのが、今のヘルメットの礎となった”500″だ。このモデルは世界初の発泡ライナーを衝撃吸収材として用いた歴史的なプロダクトであり、この構造は今もヘルメットのスタンダードになっている。
その後、後継モデルとして言わずと知れた名作である”500-TX”がリリースされ、大ヒットを記録。優れたプロダクトデザインとして1962年にはMoMAことニューヨーク近代美術館にも収蔵されるなど、バイク乗りだけでなく、多方面から高い評価を得たのである。
500-TXはヴィンテージヘルメットの花形であり、コンディションやサイズ、年代によっては数十万の価格がつくことも珍しくない。その人気の理由は、コンパクトな帽体と頬を沿うような独自のシェイプである。まるでタマゴのようなフォルムとシンプルなデザインで、シンプルイズベストという言葉がしっくりとくる。ただヴィンテージだと高額な上に、欧米人向けのフォルムのため、アジア人が被るとなるとサイズの制限がある。またこのコンパクトな帽体を活かすために、小さいサイズのものを深く被るというギリギリのラインを攻めるのが美徳とされており、安全性なども考慮すると手が出しにくい。
そんなジレンマを解消してくれたのが、今回の主役となる”500-TXJ”である。当モデルは、1968年頃の500-TXを現代の技術でリメイクし、現代の安全基準をクリアしながらも、ヴィンテージさながらのコンパクトなシルエットになっている。
まずFRP製のシェルは、オリジナルの500-TXを3Dスキャンし、SG規格に合格するギリギリのサイズで設計。また衝撃検査に合格するためEPSライナーを2層構造に変更するなど、安全性もアップグレード。また特有のおでこの張り出しやゴムモールなど、細部までこだわり、500-TXという偉大なアーカイブにオマージュを捧げている。
デカール類も忠実に再現
オリジナルのデカールは、年代によって細かな変更があり、年代判別をするための材料になる。当モデルは1968年製のデカールをもとにしているので、当時のRマークがロゴ下に配置されたデザインまで忠実に再現しているのがポイントだ
ヘアライン入りゴムモール
オリジナル同様に19㎜幅のゴムモールを採用している。金型に成型痕を残し、あえて磨かないことで、ゴムを押し出す際にできるラインを再現。これはオリジナルが同様の手法となっており、これだけでグッとヴィンテージ感が出るので欠かせない
当時と同じセンターパット
オリジナル同様の固定式となったセンターパットは、縫製パターンまでしっかりと踏襲している。また吸水性を向上させたスポンジを使っているので、快適さをキープ。追加スポンジでサイズ調整が可能となった仕様もうれしいポイントだ
オリジナルを忠実に再現
オリジナルのヴィンテージヘルメットに求める小さな帽体やおでこの張り出しなどもしっかりと再現。
オリジナルを3Dスキャンし、SG規格に合格するギリギリのサイズでリメイク。ファイバーの貼り重ね箇所を工夫し、強度を高めている