ハーレーのカスタムには「ボバー」や「チョッパー」、「フリスコ」や「スピードクルーザー」など、さまざまなスタイルが存在する。我々ハーレー好きにとってはどれも馴染み深いが、バイクに興味をもって間もない人にとっては、何のことやら、ちんぷんかんぷん!? というワケで、あらためてカスタムのスタイルを解説していこう。そもそもハーレーはアメリカで「ライフスタイル」や「文化」として深く根付いているワケだが、カスタムもまた、その時代ごとに流行を作り、いくつものスタイルを生み出してきた。第2回となる今回は、ハーレーと最も親和性の高い「チョッパー」を掘り下げていこう。
日本でいうところの「チョッパー」は、アメリカと違う!?
さて、「チョッパー」と聞いて多くの人がまずイメージするのは、映画『イージー★ライダー(1969年公開)』のような、長~いフロントフォークに高く持ち上がったハンドルといった感じのカスタムではないだろうか!? しかしアメリカでは、我々がイメージするスタイルでなないバイクであれ「チョッパー」と呼ぶこともある。何故かといえば、そもそも「チョップ(切る)」という言葉がルーツのなのだが、これは、文字通り「部品を切った貼った」して作ったバイクを指し、「カスタムスタイルの種類」というよりも「バイクをカスタムすること」に通じる広い意味をもっているから。そんなチョッパーが先の映画によって日本に最初に伝わったといわれ、その大きなインパクトから、いまだ「チョッパー=『イージー★ライダー』みたいなバイク」という図式が根付いているというワケだ。とはいえ、ここではそのようなスタイルを「チョッパー」とカテゴライズして解説していこう。
まずはこの2台をご覧いただこう。どちらもここ日本で近年に製作された、“正統派”といえるチョッパーだが、上の車両は前回解説した「ボバー」にも通じるコンパクトさが感じられるのに対し、下の車両はフロントフォークの長さが際立っていることがわかるハズ。この違いこそ、1950年代から1970年代と長きに渡って人気を博したチョッパーの“進化の過程”を表しているといえる。
チョッパーの進化を追う
では、どのような過程を経てロングフォークへと進化していったのだろうか。それは、アメリカのカスタムシーンの発展と流行が深く結びついている。エネルギーを持て余していた第2次世界大戦からの帰還兵たちがバイクに目をつけ、それを「ボバー」スタイルにカスタムして乗る行為がアウトローのカルチャーとして1940年代後半に人気を博したワケだが、そんな若者たちが戦地で見たバイクや、戦後アメリカに輸入されたBSAやトライアンフといった英国車に影響され、英車のフロントまわりやタンクを流用したり、自ら“切った貼った”して製作したハンドルなどを取り付けるようになると、それまで流行していたボバーから、より軽快でスリムな「チョッパー」へ人気が移り変わっていった。
1960年代になるとチョッパーはさらに装飾性が重視されるようになり、やがて「ロングフォーク」へと発展していったのである。
1940年代後半から大流行した「ボバー」
1950年代ごろから「チョッパー」に進化
1960年代中盤から人気を博した「ロングフォークチョッパー」
人気を後押ししたメーカー製チョッパー
当時のカスタム人気にインスパイアされて1971年に登場したのが、FL系(ビッグツイン)の車体に軽快なXL系(スポーツスター)のフロントまわりを組み合わせたハーレー初の「ファクトリーカスタム」と呼ばれる「FXスーパーグライド」だ。これが好評で、よりチョッパーテイストを強調した「FXWGワイドグライド」が1980年にデビュー。本格装備で人気を博した。
1971 FXスーパーグライド
1980 FXWGワイドグライド
現在も人気の高いチョッパーカスタム
この車両は「ツインカム」エンジン搭載のソフテイルをベースに、1950年代~1960年代のチョッパーをイメージして製作した車両。スイングアームにマウントしたフラットフェンダーに、一見キング&クイーンシート風ながら前後をセパレートしたシートを採用してフェンダーストラットを廃したシンプルな造形を“自然に”実現。ソフテイルフレームながら、まるでリジッドフレームのようなシンプルさだ。