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【H-Dカスタム インスピレーション】#4 正常進化した“スーパーグライド”を具現化

ソフテイル ナローフォーク スーパーグライド 

我々のカスタム意欲を刺激してくれるのは、有名ショップの手がけた“フルカスタム”だろう。この企画では、あえてそんなフルカスタム車両に的を絞って紹介していく。内容やコストを考えれば夢のまた夢かもしれないが、カスタムのヒントを与えてくれるのは、まさにこうした究極の一台なのだ。

H-Dの可能性を追求するサンダンスが製作した【SUPER GLIDEⅢ】

“キング・オブ・ザ・ハイウェイ”と呼ばれ、クルーズ性能に特化したツアラーの“FL”と、軽快でスポーツ性能を高めたスポーツスター“XL”。それぞれがもつ良さをミックスして1971年に誕生したモデルが“FXスーパーグライド”だ。車名にもなっているアルファベット名の“FX”は、まさに両車を掛け合わせたということを意味している。ほかのどのメーカーのバイクにも似ていないそのスタイルから、まさにこれこそがハーレーらしいとして、いまだファンが多いことはご存じの通り。その後に登場した“FXR”にも“スーパーグライドⅡ”という名で継承されたことからも、ベーシックなビッグツインとしてハーレー社も位置づけていたモデルなのだ。

ここに紹介する一台は、1970年代の初代スーパーグライドが、見た目はもちろん乗り味も当時の個性のまま進化していたら……というコンセプトのもと、ハーレーのプロフェッショナルとして世界に名を馳せる「サンダンス エンタープライズ」が製作したもの。「スーパーグライドⅢ」と名づけられたこの車両のベースとなったのは、2003年式の“FXSTDソフテイル デュース”。なんとソフテイルフレームをベースに2本ショック化したものである。

シルエットが昔のスーパーグライドに似ている“ダイナ”ではなく、“ソフテイル”をベース車にしたのには明確な理由がある。それは「シート高が低い」ことと「ソリッドマウント」であること。ハーレーらしいエンジンの鼓動感を存分に味わうなら、「ラバーマウント」よりもソリッドマウントの方がダイレクトにそれを堪能できることはおわかりだろう。しかし、不快な振動がライダーに伝わってしまうのでは!? と思う方もいるかもしれない。しかしサンダンス流に手を入れたエンジンならば、そんな心配は無用なのだ。

ハーレーらしいトルク感に欠かせないのがフライホイールの重さ。“ショベルへッド”以前と比べて、“エボリューション”エンジン以降のハーレーはそれが軽量化され、慣性力が弱い。そこで低回転でもゴロンゴロンと回り続ける強い回転慣性を生み出すべく、フライホイールにはウエイトリングを溶接。また、正確なバランス取りを行うことで、ソフテイルに搭載されたツインカムエンジンの最大の特徴といえるバランサーを撤去している。そのほかにも、圧縮比が高すぎる近年のハーレーの問題を解決するリバースドーム型ピストンを採用。排気量も1450ccから1800ccへと拡大している。こうしたサンダンス流のエンジンチューニングを施すことで、ショベルヘッドのようなドコドコ感あふれるフィーリングながら、それをさらに増幅した、誰もが乗って楽しいと感じられるテイストを実現。このエンジンを最大限に堪能するために必要なのが、ソリッドマウント方式のソフテイルフレームというワケだ。

低いシート高、そしてミッドコントロール化したステップ、さらに当時と同じ2分割式としたオリジナルハンドルバーによってスーパーグライドとほぼ同じポジションを実現。さらにはスーパーグライドと見まがうルックス、そしてショベルヘッドのドコドコ感さえも凌駕するハーレーらしいテイストへと変貌したエンジンの組み合わせは、誰もが望む“スーパーグライドの理想像”といえるだろう。

2本ショック化されたリアまわり。プログレッシブ製のリアショックは11インチを採用。これを適正に作動する位置まで吟味して装着している。高い剛性で走行フィーリングを向上させるハイテンションスチール製スイングアーム。大改造が必要になりそうだが、実はリアショックのマウント部を含めて、すべてキット化されているため比較的容易に2本ショック化を実現できる。

キャブレターは定評あるサンダンスFCRだが、これは1650cc以上の大排気量エンジンに対応した“ビッグボーイ”。ベンチュリ―は口径45mmと大径化、さらに楕円化した市販キャブレターの中でも最高のエアフロ―値を誇る逸品。鋭いふけ上がりと低回転からの太いトルクを実現する。

フロントまわりはダイナから流用した39mmフォークに換装。スプリングはトラックテック(※サンダンスオリジナルブランド)製に交換し、オフセット量を調整したオリジナルのトリプルツリーで装着している。ブレーキキャリパーも圧倒的な性能を誇るザックスパフォーマンス製(※サンダンスオリジナルブランド)だ。

トリプルツリーのアンダーブラケットには本家スーパーグライドと同じくクロムのカバーを装着。そこに入れられた「SUPER GLIDE」の車名は純正と同じステッカーではなくペイントで再現。当時風でありながら、クオリティが遥かに向上している。

社外品のレプリカメーターマウントを使用し、純正と同じようにライザーの手前にメーターを装備。取り付けられたメーターは最新のモトガジェット製だ

当時のポジションをツインカムの車体に忠実に再現したミッドコントロール。ワンオフで製作されたものだが、純正と見まがう作り込みはH-Dを知り尽くしたサンダンスならではといえるだろう。

1970年代のハーレーを語るうえで欠かせないスーパーグライドの特徴的なタンクの造形だろう。これは純正を流用したものではなく、アルミ叩き出しで再現したという高品質なもの。もちろん軽量化にも貢献する。さらには、経年変化で色褪せしていない純正タンクから当時の色を忠実に再現したという色、そして本来は水張りステッカーであるAMFマークの入ったロゴやレインボーラインも塗装で再現したというこだわりのペイントにも脱帽である。

当時の人気パーツであった薄いシルエットのコブラシートも、この車両のためにワンオフで製作したもの。フェンダーストラットの造形にもこだわっており、この部分を見ればベース車両がソフテイルだとは想像もつかない仕上がりである。

【DATA】

取材協力/サンダンス エンタープライズ TEL03-5450-7720

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