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キャブレターとインジェクションの違いって!?

キャブレター インジェクション 違い

ハーレーに限らず、現代のバイクは【EFI(エレクトリック フューエル インジェクション※以下「インジェクション」に省略)仕様】が当たり前。しかし、ハーレー社は15年ほど前まで【キャブレター仕様】がラインアップのほとんどを占めていた。新車でハーレーを手に入れるなら何も悩まずインジェクション一択だが、中古車を視野に入れたとき、選択肢に入ってくるのがキャブレター。だが、両者はいったい何がどう違うのだろうか。インジェクションが当たり前になってしまったいまこそ、あえてその違いを紐解いてみよう。

そもそも何なの!?

ハーレー社が採用していたキャブレター

1988年モデルのスポーツスターに初めて採用され、翌年からビッグツインモデルにも採用。以降、キャブレター車の最終モデルとなった2006年まで使用されたのがケーヒン製の「CVキャブレター」だ。スロットルの開度で空気量をコントロールし、ピストンバルブはエンジンの負圧で開閉。そのため、スロットルをガバッと開けても必要以上の混合気が吸い込まれないのでダイレクト感がない反面、誰もが扱いやすい特性をもつ

ハーレー社が採用しているインジェクション

これはエンジンに直接接続される「スロットルボディ」と呼ばれるパーツ。インジェクションは車体各部のセンサーとコンピューターによってコントロールされているため、この写真の部品がシステムのすべてではない。ハーレー社が初めてインジェクションを採用したのは1995年から。当時はマグネッティ・マレリ社製だったが、2002年からマフラーにO2センサーを備えたデルファイ社製に変更し、ごく一部のモデルに採用されていた。ハーレーのラインアップが全車インジェクションとなった2007年からは、自動調整機能や学習能力を向上させた“反応型”へと進化している

どんな役割を果たしているのかといえば、キャブレターもインジェクションも【エンジンに燃料を供給する装置】であることに違いはない。ここでいう【燃料】とは、単純にガソリンということではなく、【混合気】の状態のこと。液体のままのガソリンでは燃焼しにくいため、空気を混ぜて霧状にし、燃えやすくする必要がある。この状態を混合気というのだが、キャブレターとインジェクションは、これを作り出す方法、そしてそれをエンジンに供給する方法がまったく異なっているというワケだ。

キャブレター=受動的(受け身)なシステム

エンジン内でピストンが下がったときに生じる負圧を利用して、キャブレター内に貯めたガソリンを吸い出させる仕組み。その際ガソリンは「ジェット」と呼ばれる穴から吸い出されるのだが、空気と混ざって霧状になって“エンジンに吸い込まれて”いる。ジェットは低速域、中速域、高速域を司る3種類があり、ガソリンの濃度は、キャブレターメーカーが用意している穴の大きさや形状が異なるものに交換することで調整することができる。

キャブレターの断面図。イラスト下のグレーのグラデーション部分がフロート室で、ここにガソリンが貯められている。スロットルを開けると「スロットルバタフライ(※イラスト中心のやや左にある黒丸を備えた部分。黒丸を支点にスロットルを閉じると時計回転で閉じ、反時計回転で開いて全開時は水平になる)」と呼ばれる弁が開き、エンジンの負圧の加減によって「ピストンバルブ(※ジェットニードルとバネを備えた部分)」が持ち上がる仕組み。その加減によって3種類あるジェットからガソリンが吸い出されるのだ

燃料を吸い込む「エンジンの負圧」とは!?

エンジンが発生させる負圧という力を理解するには注射器をイメージするとわかりやすいだろう。エンジン内でピストンが下降すると、注射器の「押し子」を引いたときと同じように、吸い込む力が発生する。これがいわゆる負圧だ。また、エアクリーナー側は常に「大気圧」がかかっている状態であり、その反対のエンジン側に負圧が生じ、その圧力差によってキャブレターのメインボアは空気が流れるというワケだ。その実験をしてみたのが下の写真である。

ガソリンに見立てた赤い液体を貯めた容器の上に、キャブレターのメインボアに見立てた筒を合体。中央の細いパイプはニードルジェットの代わりだ。メインボアの空気を掃除機で吸引すると、貯められた液体はニードルジェットを伝って吸い出され、メインボアで霧状になって空気とともに吸い込まれる。これこそがキャブレターの原理だ。

インジェクション=能動的(働きかける)システム

センサーから送られてくる情報から必要なガソリン量(混合気の濃度など)をコンピューターで算出し、噴射機から適量のガソリンを直接エンジンに送り込む仕組み。「E(CM(エンジン コントロール モジュール)」と呼ばれるコンピューターは、エンジンを正しくコントロールするためのプログラム(マップとも呼ばれる)が入った、いわば頭脳的な部分で、エンジン各部のセンサーから集積された膨大なデータとプログラムされたデータを照らし合わせ、その状況に合わせて適切な濃度の混合気を判断し、「インジェクター」と呼ばれる噴射機から直接送り込んでいるのだ。

キャブレター車のガソリンは、キャブレター本体のフロート室に常に貯めておける構造のためタンクから自然に落下させるだけで十分だが、インジェクション車の場合、インジェクターから即座に噴射できるよう、常に力強く流しておく必要がある。そのためにタンク内にはポンプがあり、これによってガソリンを圧送している。また、キャブレター車は勝手に霧化されて混合気になるが、インジェクション車は電動の噴射機で霧化。常に適切な噴射量をECMが判断し、命令が下されているのだ

重要不可欠な「コンピューター」の役割とは!?

インジェクション車にはエンジン内をはじめ数多くのセンサーが車体に備えられている。この膨大なデータをもとに、ECMが車体の最新状況を常に正確にモニタリングしているのだ。この最新データとECM内のプログラムを照合し、現在必要としているガソリン量を算出。またインジェクション車はガソリンだけでなく点火タイミングも判断している。これらによって完璧に制御されているというワケだ。

これはECM内の「命令プログラム」の一部。エンジン回転数に対するガソリンの噴射量などが、項目ごとに細かく入力されており、各センサーからの情報を照合しつつ、この数字に基づいて瞬時に、いまエンジンが必要としている燃焼噴射量などを決定するワケだ。キャブレター車はエンジン始動時にチョークを引いて燃料を濃くするなどの物理的な操作の必要があったほか、気圧や温度の変化でパワー感がなくなったりすることもあったが、完全に管理されたインジェクション車の場合、そうしたことはまったくないのである。

決定的な違いは“環境性能”!!

さて、これらの違いが我々乗り手にどう関係があるのかといえば、最も大きな違いは環境性能だ。エンジンというものは混合気を燃焼させて動力を生み出すワケだが、この混合気の比率が重要。ガソリン1グラムに対して、空気は13~13.5グラムが最もチカラが出る比率なのだが、年々厳しくなる排出ガス規制によって、その比率のガソリン量ではNGとなった。ハーレー社も極限までガソリンを薄くした燃料でキャブレター車を存続させていたが、2007年、ついに負圧任せで吸い込ませるキャブレターでは限界となり、コンピューターで完全に管理できるインジェクションに取って代わったというワケだ。いわば環境性能が重視される現代において、必要不可欠なシステムといえるだろう。

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