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いまこそ振り返る!【スポーツスターの歩み】~ラバーマウントフレーム編

すべてを刷新して登場した「スポーツスターS」。水冷DOHCエンジンにはじまり、各種電子デバイスなどの最新テクノロジーを注入。伝統を頑なに守ってきたハーレーが、いよいよ新時代へと突入したことを感じさせる話題のNEWモデルだ。しかし、従来のスポーツスターからあまりにもかけ離れたルックスに、古参のファンは不安を覚えたかもしれない。だが時代が変わっても、その根底には“スポーツモデル”として最初にデビューした1957年モデルと同じマインドが息づいているという。では、その起源となったものとは!? というワケでスポーツスターの歴史を振り返りながらアイデンティティを再確認してゆくこの企画。最終回となる今回は、歴代モデルの中で“第4世代”にあたる“ラバーマウントフレーム”のスポーツスターについて紐解いていこう。

「ラバーマウントフレーム」のスポーツスターとは!?

2004年に第4世代へと進化したスポーツスター。従来よりもひと回り大きくなったラバーマウントフレーム採用に伴って外装部品はすべて新造。同時にエンジンも見直され、まったく新しいモデルへと生まれ変わった

生粋のスポーツモデルとしてその歴史を育んできたスポーツスターだが、2004年に登場した第4世代、「ラバーマウントフレーム」モデルによって転機を迎えた。このフレームは、「ツーリングモデル」を皮切りに、「FXR」や「ダイナ」に用いられてきた、ハーレー独自のメカニズムといえるもので、振動の大きな大排気量の2気筒エンジンでもスムーズに高回転域まで使えるよう、ラバーを介してエンジンを搭載。いわばエンジンがフレーム内で“宙吊り”状態になっているため、エンジンの振動が乗り手にダイレクトに伝わらないという仕組み。これによって乗り心地が飛躍的に向上したのだ。しかし、エンジンを車体の剛性メンバーとせず、フレーム単体での剛性が求められるため、従来の「エボフレーム」よりも車体はひと回り大きくなり、重量が25kgほど増加。そのため登場当初は賛否両論あったのも事実だ。つまりこの第4世代になったことで、スポーツスターはスポーツモデルからクルーザーへとその路線を変更したのである。

新設計された「ラバーマウントフレーム」

アメリカの高速道路網が発展し、スピードを出せる環境が整ってきたことに加えて、並列4気筒エンジンを搭載した日本製バイクをはじめとした高性能モデルへの人気に応えるべく、ツーリングモデルを皮切りに1980年からハーレーが採用してきた独自のメカニズム。エンジンとフレームの間にゴム(ラバー)製のアイソレーターという部品を介して、ライダーに振動がダイレクトに伝わることを抑え、スムーズに高回転まで回せることが狙い。エボフレームにカタチこそ似ているが、フレーム単体での剛性が求められるため、メインチューブ径を41.3mmから54mmへと拡大。これによってエボフレームと比較して26%強度がアップしている。

合わせて刷新された“NEWエボリューション”エンジン

見た目はほぼ変わらないものの、すべてが見直されたNEWエボリューション。バルブまわりの簡素化にはじまりピストンとコネクティングロッドの軽量化で高回転域をより安定させ、ビューエルの技術が息づくハイパフォーマンスカムによって15%以上のトルクアップを実現。ピストン冷却用のオイルジェットの追加や、シリンダーフィンを薄く大型化したことで冷却性能も向上している。

2007年から全モデルをインジェクション化!

年々厳しさを増していく排出ガス規制に適合させるには、エンジンに供給するガソリンの量を極限まで少なくしなければならないワケだが、エンジンが発生させる負圧に任せて“燃料を勝手に吸い込ませる”キャブレターのままでは限界があった。事実、排気量の小さな883シリーズは、「まったく走らない」という声も聞かれるほどになっていたのだ。そこで、決められたガソリン量であってもコンピューターによって完全にエンジンを制御できる「フューエルインジェクション」が2007年から採用された。これによって燃焼効率はもちろんだが、アクセル操作に対するレスポンスが向上した。

これは従来までキャブレター本体が収まっていた部分に備えられた“スロットルボディ”というパーツ。マニホールドのエンジン近くには“インジェクター”と呼ばれる噴射機がセットされていて、その先端にあるノズルからガソリンを噴射。あらかじめプログラミングされたデータと、その瞬間の車両の状態に合わせて、常に適量のガソリンをエンジンに送り込む
シート下に配置された四角いボックスが“ECM(エンジン・コントロール・モジュール)”と呼ばれるコンピューターだ。車体各部に設けられたセンサーから得た最新情報がここに送られ、あらかじめプログラムされているマップデータと照合し、瞬時に円算。バイクの状態に合わせて常にべベストなガソリン量や点火タイミングを決定している

ストリート感あふれるカスタムモデルが充実!

以前のモデルよりもひと回り大きく、そして重くなった第4世代のスポーツスター。そのため、従来モデルに多かったパフォーマンスを重視したカスタムはなりを潜め、“大きくなったモデルを、いかにシンプルかつコンパクトにカスタムするか”に注目が集まることとなった。そんな中、ハーレー社は2008年から「ダークカスタム」というプロジェクトをスタート。これは世界中のハーレーユーザーがカスタムを楽しんでいるという事実を踏まえ、理想的なカスタムに近いベース車を提供することを目的としたもの。2008年に登場した「XL1200N ナイトスター」や、その翌年の期中導入モデルとしてデビューした「XL883N アイアン883」を皮切りに、よりユーザーの好みに近い、ストリート感あふれるカスタムモデルが充実していくこととなったのだ。

2009年の期中導入モデルとしてデビューした「XL883N アイアン883」は、絶版となった現在も人気の高いベストセラーモデル。ローダウンした車体に“ボバースタイル”を彷彿とさせるショートタイプのリアフェンダー、さらにエンジンや足まわりをブラックアウトするなど、まさにコンセプトである「ダークカスタム」を象徴するかのような一台だ
「ダークカスタム」モデルの第1弾となった「XL1200N ナイトスター」は2008年に登場。日本販売の初期モデルはベーシックなリアフェンダーが採用されていたが、翌年からはリアウインカーにテールランプ機能をもたせたタイプを採用し、本国仕様とほぼ同じショートタイプのリアフェンダーを採用。シンプルでコンパクトなシルエットで人気を博した

概念を覆す、新感覚のカスタムモデルが大人気に!!

スポーツスターとは思えないほどのマッチョな力強さを、低くコンパクトな車体に落とし込んだ独特なスタイル。「XL1200X フォーティーエイト」が2011年にデビューするや、たちまち新しいハーレー購買層を生み出すほどの大人気となった。ストリートに映える自然なデザインは、まさにスポーツスターだからこそ実現できたものといえるだろう

上で紹介しているXL1200N ナイトスターやXL883N アイアン883が好評だったことを受け、ハーレー社はさらに一歩進んだカスタムモデルを市場に投入した。それが2011年に登場した「XL1200X フォーティーエイト」だ。往年のピーナッツタンクを復刻しつつ、フロントにはファットな16インチホイールを採用。従来のスポーツスターとは一線を画す斬新なモデルに仕上げた。流行のストリートカスタムと往年のボバースタイルをミックスした独特な雰囲気から、日本でも新たなハーレー層を獲得するほどの大人気となったことは記憶に新しいところだ。

新たなスポーツ性を追求したモデルも登場

2008年以降、充実していった車高の低い“ローダウンモデル”によって従来まであったスポーツスターのスポーツ性は失われつつあった。そこでハーレー社はスポーツを明確に打ち出したモデルを2009年にラインアップに加えた。それが「XR1200」だ。フラットトラックレーサー「XR750」を彷彿とさせるシルエットに、このモデルだけに採用された倒立フォークや軽量なキャストホイールなどを採用。エンジンもビューエル譲りの技術を投入することで、スポーツライディングも楽しめる一台としたのだ。しかし、そのコンセプトがハーレー好きには響かず、わずか3年でラインアップから消滅してしまったのである。

独自のメカを数多く採用したXR1200。中でもエンジンは大きく違っており、冷却方法を単なる空冷に頼らず、オイルクーラーで冷やしたオイルを積極的にヘッドまわりに循環させることで、熱をもちやすい排気ポート周辺を冷却する「油冷システム」をいち早く採用していた

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