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ハーレーの“スプリンガー”って何のこと!?

ハーレー スプリンガーフォーク

ハーレーが気になり始め、インターネットや雑誌で情報を収集するようになると、車名に「スプリンガー」という“聞きなれない言葉”を冠したモデルがいくつかあることに気づくハズだ。さらに、その車両をよく観察すると、通常とは異なるフロントフォークが装備されていることに気がつくだろう。これこそが「スプリンガー」の正体だ。むき出しのスプリングなど、見た目にも明らかに前時代的なフロントフォークだが、果たしてその魅力とは!?

今から70年以上も前に採用されていたフロントフォーク

ハーレーに限らず、フロントフォークといえば「テレスコピックフォーク(上写真・右)」が一般的だ。これは、パイプが下側の筒に出入りするように伸縮する動きが望遠鏡(テレスコープ)に似ていることから、その呼び名がついたフロント用のサスペンションで、内部にスプリングと油圧ダンパーを備えているのが特徴。現代のオートバイは、ほぼすべてこのタイプが採用されているといっていいだろう。対して、テレスコピックフォーク登場以前のシステムが「スプリンガーフォーク(上写真・左)」。テレスコピック登場以前のフロントフォークには、このスプリンガーフォークのほか、それよりも性能で勝る「ガーダーフォーク」と呼ばれるシステムも存在したが、こちらはインディアン社が採用していた。それもあってハーレー社はスプリンガーフォークを採用していたのだ。

「パンヘッド」エンジンがデビューした1948年モデル(写真)が、最後のスプリンガーフォーク採用モデルとなった。そのためパンヘッド初期型の1948年モデルのみ特別な存在として認知され、「ヨンパチ」の愛称でファンから親しまれている

スプリンガーフォークが採用されていたのは、写真の1948年モデルまで。1949年からテレスコピックフォークが標準装備されるようになった。リアにサスをもたない「リジッドフレーム」にスプリンガーフォークという組み合わせは、1940年代以前のハーレーの象徴ともいえるだろう。

スプリンガーフォークの仕組み

後ろ側の「リジッドフォーク」と前側の「可動フォーク」を、下部のリンクアームで連結。フロントホイールが路面の凸凹に合わせて動くと、可動フォークが上下し、その上にあるスプリングによって衝撃を吸収する。2種類のバネを同一線上に配置し、上下のバネが逆方向に伸縮することでサスの動きを安定化。上のイラストで説明すると、路面からの突き上げによって可動フォークが上に動くと(上イラスト・右)、下側のバネは「縮む」のに対し、その上に備えたもう一つのバネは「伸びる」というワケだ。

しかし、ストローク量が絶対的に少ないほか、路面からの衝撃がスプリングだけで収まらず、それが後ろのリジッドフォーク側にも伝わってしまい、最悪フォークが折れるトラブルも少なくなかった。

なぜ“スプリンガー”は再び採用されたのか!?

スプリンガーは1948年以前のハーレーに採用されていた、まさに前時代のフロントフォークだったワケだ。にもかかわらず「スプリンガー」の名を冠したモデルが、比較的新しいモデルとして存在していることを不思議に思う人もいるかもしれない。そう、一度廃止されたシステムを再び復刻しているためだ。その理由は、1984年にハーレー社が社運をかけてデビューさせた「ソフテイル フレーム」にある。

1984年に登場した「FXSTソフテイル」は、経営破綻に近い状態だった当時のハーレー社にとって大きなチャンレンジの象徴といえるモデルだ。リジッドフレームのような造形を再現したソフテイルフレームは、当時非常に画期的なうえに圧倒的にスタイリッシュで、瞬く間に大ヒット。ハーレー社は復活への足掛かりをこのモデルによってつかんだのである

1984年、新開発のOHVエンジン「エボリューション」を搭載し、まったく新しいモデルとしてデビューした「FXSTソフテイル」は、1957年まで純正採用されていたリジッドフレームのシンプルな造形を、リアショックを備えたうえで再現した「ソフテイル フレーム」が特徴。このヒットによって成功を収めたハーレー社は、それをさらに強固なものにすべく、バリエーションモデルを次々と登場させた。その目玉モデルのひとつが、いにしえのスプリンガーフォークを復刻し、“ヴィンテージスタイル”を完全によみがえらせたモデルだ。

1988年にデビューした「FXSTSスプリンガー ソフテイル」は、先に登場したFXSTソフテイルのチョッパー色をより強調したモデル。それまでカスタムの世界でしかありえなかったスプリンガーフォークを市販モデルに落とし込み、他メーカーのバイクとは一線を画した唯一無二のスタイルでデビューするや世界的に大ヒットとなった

1988年、ソフテイルフレームにスプリンガーフォークを備えたNEWモデルとして「FXSTSスプリンガー ソフテイル」がデビュー。フロントに21インチホイールやファットボブリアフェンダーを採用した本格チョッパースタイルで注目を集めた。スプリンガーフォークは十分な強度を得るためにコンピューターを駆使して再設計。材質も柔らかく、密度の高い軟鋼を使用することで折れにくくした、性能も現代的にアップデートしたものだ。このモデルは好評で、その後、1997年にはフロントに16インチホイールを採用した「FLSTSヘリテイジ スプリンガー」も登場。ソフテイル人気をより盤石なものに昇華させた。

再び絶版となったスプリンガーフォークのハーレー

さて、現在はどうかといえば、現行ラインアップにスプリンガーフォーク採用モデルは存在しない。これは前後ABSブレーキシステムの義務化や排気量を年々拡大してトルクアップしたエンジンなど、スプリンガーフォークのままではハーレーの走行性能維持が難しくなったからほかならない。そのため、2008年に登場し、2011年まで販売された「FLSTSBソフテイル クロスボーンズ」がスプリンガー標準装備のラストモデルとなったのだ。

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