鉄馬乗り的 銘品図鑑 アイアンハート「634S」
世には銘品と呼ばれる優れたプロダクトが、数多く存在している。そんなマスターピースを鉄
馬乗りの目線でピックアップ。ハーレーライフをより充実させてくれる相棒になってくれることだろう。今回は唯一無二のヘビーオンスジーンズを作り続ける「アイアンハート」の最定番モデル「634S」をご紹介。
ヘビーオンスデニムというジャンルを作った功労者
ハーレー乗りの必需品と言っても過言ではないヘビーオンスデニム。このジャンルを作ったパイオニアはアイアンハートで間違いはないだろう。通常のデニムは、12〜14ozだが、アイアンハートの定番は21ozである。
代表であり、ディレクターを務める原木真一さんは、ジーンズに関わって40年以上の大ベテラン。’90
年代に巻き起こったリプロダクトブームの時も多くのヒット作にパタンナーとして関わっていた。そんな縁の下の力持ちだった原木さんが、自身のブランドであるアイアンハートをスタートしたのは2003年。46歳の時だった。
「実はヘビーオンスデニムはブランド設立前、今も大切なパートナーである岡山のデニムファクトリ
ーがヘビーオンスデニムを作ったというので見せてもらったのが最初です。その存在感や個性的な表
情に興味を持ち、そこから試行錯誤の末、今も続いている21ozセルビッジデニムが生まれたんです」
原木さんが目指したのは、所有する喜びのあるハイクオリティなヘビーオンスデニム。その象徴と
言えるのが、発売から20年間、ロングセラーの“634S”だ。
「うちのオリジナルデニムは特殊なんです。経糸、緯糸ともに単糸にした綾織りがデニムの定義なのですが、うちの場合は厚みとソフトな肌触りを実現するために、緯糸に双糸を使っているんです。双糸というのは2本の糸を撚り合わせたもので、糸を太くするだけでなく、強度もあってコシが出ます。アイアンハートは私の趣味であるバイクに乗るために作ったものなので、頑丈さや肌触りは欠かせない要素でした。ヘビーオンスにしたのは転倒時に身体を守ってくれることや風を通しにくいことを重視しているから。また未洗いの際の表情はもちろん、ヘビーオンス=色落ちが悪いという概念も覆したく、はき込むほどにいい顔に育っていく生地感もこだわりです」
アイアンハートのジーンズが支持されているのは、デニムのクオリティだけでなく、計算されたシルエットも大きな要因。
「基本的にハーレーは前傾ポジションにならないので、股上を浅くし、ライディング中にお腹を圧迫しないように配慮しています。風でバタつくのが嫌いなので、シルエットは細身にしているんですよ。ヘビーオンスだからと言って、ストレスを感じることがないようにしています。また買ったくれたお客様には、少しでも長く愛用してほしいとの思いから、ライフタイムギャランティーを付け、いつでもリペアを受け付けています。アイアンハートのジーンズは、ファッションの前にバイク乗りのツールでありたいと思っています」
634S
21ozセルビッチデニム ストレート
2万8600円
2003年にリリースされたヘビーオンスデニムの銘品。経糸に4番のムラ糸、緯糸にデニムの常識を覆した5番の糸を2本束ね、シャトル織機で編み上げた21ozオリジナルデニムを使っている、すっきりと仕立てたストレートカット
改良を繰り返した21ozセルビッジ
ヘビーオンスデニムが登場したころは、技術的に旧式の織機が使えず、セルビッジのないことが常識であったが、優れたデニムファクトリーと協業し、セルビッジ付きのオリジナルデニムを開発。究極の完成度を誇る
緯糸双糸の独自の生地
アイアンハートならではの意匠となっているのが、緯糸に双糸を使っていること。糸を2本束ねるため、太さだけでなく、強度が高く肌触りもよくなる。ヘビーオンスデニムでもゴワゴワしない理由は、こういった独自の技術があるからこそ
ベルトループにもなるレザーパッチ
オリジナルのレザーパッチは、あえて上下を縫製することで、ベルトループとしての役割を果たしている。これにより、ベルトを締めた際でも違和感を覚えることがなく、ストレスなく着用できるように工夫した
濃淡がはっきりした色落ち
ヘビーオンスデニムは、通常のデニムに比べて色落ちした際の表情が乏しいというのが一般的なイメージだが、アイアンハートは独自の技術で圧倒的なエイジングを実現している