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【H-Dカフェレーサー ファイル】#6 本物を超える究極の“ルシファーズハンマー”

ハーレー スポーツスター カフェレーサー ルシファーズハンマー ビューエル

漫画『特攻の拓』の影響で名前ばかりが有名になってしまった印象があるが、皆さんは「ルシファーズハンマー」というバイクをご存じだろうか!? もちろん漫画に登場したヤマハ“SR400”のカフェレーサーではない。そのルーツはハーレーのレーシングマシン。今回はそんな伝説のマシンが抱えていた“構造的問題”を改善し、ストリートマシンへと昇華した究極の一台を紹介しよう。

そもそも“ルシファーズハンマー”って何だ!?

2気筒のバイクのみで競う「バトル・オブ・ザ・ツイン」が1982年からAMAの選手権としてシリーズ化された。このレースは“排気量1000ccの市販車”をベースにすることをルールとして定めていたのだが、ハーレーの当時のラインアップにあった“XLH1000スポーツスター”でレースに出るのは、あからさまに役不足。そこで1983年にレースに出場することを目的に開発されたのが“XR1000”だ。そのエンジンを、ロードレーサーとして既に活躍していたハーレーのファクトリーマシン“XR-TT”のフレームに搭載したものが「ルシファーズハンマー」である。このマシンはその後ジーン・チャーチのライディングによってバトル・オブ・ザ・ツインを3年連続で制するほどの実力を見せつけたのである。

だがその後、1987年よりビューエル“RR1000”をベースマシンとした「ルシファーズハンマーⅡ」へと進化。ラバーマウントフレームなど革新的なメカニズムを採用していたが、満足な結果を残せないまま、1990年にレースから撤退した。今回紹介するカフェレーサーは、まさしくこのRR1000がベース。“本物のルシファーズハンマー”といっても過言ではないだろう。

1986年に発売されたビューエルRR1000。ルシファーズハンマーⅡ譲りのクロモリ製トラス型フレームにXR1000のエンジンをラバーマウントで搭載。フルカバードされたフェアリングをはじめ、リアショックを車体下側に配置。さらに前後には小径16インチホイールを備えた個性的なモデルだ。尻下がりなシルエットも特徴。サンダンス代表、ZAK柴﨑氏いわく「当時は本当に大変だった」と振り返る

RR1000が抱える数々の問題点を克服した究極のカフェレーサー

ビューエル誕生初期から扱っていた「サンダンス エンタープライズ」によるRR1000。タンク&シートの造形やカラーリングなど、ルシファーズハンマーを知る方ならば心躍るルックスであることは間違いない。走り出せば、スタートからXR1000とは比べモノにならないほどに力強いトルクがある。回転を上げるほど力が出る“XRのフィーリング”はそのままだが、肝心のパワーとトルクはまったくの別モノといっていい。また、普通に流しているつもりでも、ふとスピードメーターを見たら、とんでもない速度で自分が走っていることに気づかされた。車体が暴れるなど、挙動から感じる“スリルあるスピード感”がまったくなく、乗っている本人は平和そのもの。エンジンもものスゴいが、車体側もそれに負けないほどスゴい。まるでメーカーが製作した、乗りやすくて速いスーパースポーツに乗っているかのようだ。それほどまで完成度が高いことに驚かされた。

「フルカウルだとレーシーすぎるし、エンジンもよく見えるようにしたい」というオーナーの希望でサンダンスオリジナルのXLCRタイプのビキニカウルを採用。コンパクトだが高速域での整流効果は非常に高い。前後のダイマグ製ホイールは、エリック・ビューエルから譲り受けたという本物のルシファーズハンマーⅡ用スペアホイールで、フロント16、リア17インチというサイズを採用。さらに、オリジナルの外装パーツに交換したことによってノーマルにあった“後ろ下がり”なフォルムを解消している

見た目は1980年代のレーサーといった雰囲気だが、走れば現代の国産スーパースポーツとも張り合えるのではないか!? というほどに完成度の高い一台。「エンジンがよく見えるようにしてほしい」というオーナーの希望で採用された、XLCRタイプのビキニカウルも整流効果は十分。ビックリするような速度域でも、乗り手は至って平和だ。これは、カウルの効果だけではなく、前後のサスがよく仕事をしているということでもあり、サンダンスのセッティング能力の高さを物語っているといえるだろう。さすがデイトナの覇者である。「レースで勝てるマシンは、実際には誰が乗っても乗りやすいものがほとんど」という逸話を聞いたことがあるが、これこそがまさにソレだと確信した。実際に走らせてみると、単なる“カフェレーサー”に分類してしまうのは忍びないほどの高いポテンシャルが感じられるのである。

1987年に登場したビューエルRR1000は、伝説のレーシングハーレー、“ルシファーズハンマーⅡ”のフレームをベースに使い、XR1000のエンジンを搭載して約50台が販売された。しかし、市販のモーターサイクルとして見ればまだまだ未完成といえる出来で、その当時からビューエルを扱っていたサンダンスは、レース活動などで得た経験に基づき、ベストな対策とチューニング方法を見つけ出したという。それらを施して完成したRR1000が、この一台というワケだ。

エンジンはXRの究極形といえる“スーパーXR”に換装。足まわりや補強は本家のビューエルも参考にしたというほどの対策とチューニングが施されている。外装に関してはオーナーの強い要望により、ルシファーズハンマーⅡ仕様となっているが、これはサンダンスがリリースするオリジナル品で、ロングタンクはオリジナルより7cm短く製作されており、これがライディング時の身体の自由度を生み出している。眺めてよし、実際に走らせればさらによいという、まさに究極の一台といえるだろう。

オーナーが新車で購入後、エンジンにはいろいろと手を入れたが、最終的にはスーパーXRに積み替えたという。排気量が1200ccに拡大されてパワフルになるうえ、5速ミッション化できるなどメリットは大きい。加えてXR1000のような耳障りなメカノイズも皆無だ
フロントフォークはヤマハ“XJR”から流用したフルアジャストタイプ。リアサスはクァンタムをベースにスプリングを交換し、独自のセッティングを施したもの。低速~高速域まで、まるで路面にバイクが吸い付くような、ビターッとした安定感を生み出す
当時のレーサーのタンクはとてつもなく長く、実際にまたがると、その状態からほとんど動けないというぐらい自由度がないポジション。そこでタンクは本物のルシファーズハンマーより7cm短く設計。合わせてステップも前進させることで、腰をズラしたハングオンの姿勢も容易にとれるようになっている。テールカウルには、羽根を広げたイーグルとホイール、そしてチェッカーフラッグをあしらった本物と同じイラストが入っている

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