鉄馬乗り的 銘品図鑑 SKULL FLIGHT「MOTORCYCLE N-3B」
世には銘品と呼ばれる優れたプロダクトが、数多く存在している。そんなマスターピースを鉄馬乗りの目線でピックアップ。ハーレーライフをより充実させてくれる相棒になってくれることだろう。今回はSKULL FLIGHTの「MOTORCYCLE N-3B 」をご紹介。
問い合わせ／フリーライド
TEL0277-47-1055
https://www.facebook.com/californialine/
MOTORCYCLE N-3B
インナーベストスペシャル
8万5800円
USエアフォースを象徴するフライトジャケットのひとつであるN-3Bをバイク乗り仕様にモディファイした銘作。このインナーベストスペシャルは、そのネーミング通り取り外し可能なベストを装備。ベストはタイガーストライプカモとウッドランドカモのリバーシブル仕様になっており、単品で着ることも可能。あえてエリを高く設定することで、首元からの風の侵入を防ぐのもポイント
細部まで徹底したメイドイン桐生の結晶
今回ピックアップするのは、古来から繊維工業の街として知られる群馬県桐生市にある名店「フリーライド」が展開する「スカルフライト」の“N-3B”だ。当作に触れる前に、そのルーツとなったUSエアフォースのN-3Bを紐解きたい。
MA-1やA-2と並び、アメリカを代表するフライトジャケットであるN-3Bは、レザーからナイロンへ置き替わっていった戦後に主役となったN-3シリーズの系譜。N-3は、B-9から続くマイナス10〜30度に適応するヘビーゾーン用のフライトジャケットとして1948年頃に採用されたと言われている。その後、陸軍から独立した米国空軍の象徴であるエアフォースブルーを纏ったN-3Aが登場。そしてエアフォースブルーが敵から目立ちやすいとの理由で、セージグリーンを採用したN-3Bが1953年より支給された。それまでのフライトジャケットと違い、コックピット内で装着するのではなく、輸送機の搭乗員や地上勤務を行うグランドクルーに支給されたことから防寒性を重視し、ミドル丈でヘルメットを着用したままでも被れるコヨーテファー付きのパーカが特徴だ。
そのルーツを辿ると保温性には優れているが、もちろんバイク乗りとは無縁であり、その視点から見ると改良する余地はたくさんあった。そんな部分に目を付けたのがフリーライドの代表、二渡一弘さんだ。四半世紀以上ハーレーに乗り続けるベテランであり、28歳で独立するまでは洋服のOEMの会社でキャリアを積んだ人物。
まず取り掛かったのが風でバタついてしまう大きなシルエット。身幅とアームホールなどをタイトに設計するだけでなく、ライディングポジションでもストレスなく着られるように着丈を長くし、アームに立体裁断を取り入れて改良した。そしてソデ口のインナーリブにニュージーランド産のムートンを配することで、風をシャットアウトし、手首まわりの保温性が格段にアップ。加えて、無骨な印象のミディアムオンスのナイロンに撥水加工を施すことで、防水性も向上させている。
そしてヘビーアウターの肝となるライニング素材には、軽量で保温性があり、劣化の心配もない圧縮ウールを採用している。さらにこのインナーベストスペシャル仕様は、取り外し可能なベストが装着されており、その保温性をアップグレードさせている。フードには天然のコヨーテファーを配し、ビジュアルも機能面もしっかりと考慮している。
この圧倒的な作り込みを実現できるのは、フリーライドがベースとする桐生にいるクラフトマンたちの技術だ。生産を担当しているファクトリーは、日本屈指のミリタリーウエアのスペシャリストであり、二渡さんの事細かなこだわりを、その匠の技術で見事に体現している。
アメリカンクロージングへの深い見識、ハーレー乗りとしての経験、そして桐生のクラフトマンシップが三位一体となって、生まれた銘作なのだ。
リアルなコヨーテファー
ヘルメットを被ったままでもストレスなく脱着できるようにかなり大きめに設計されたフードには、贅沢にコヨーテファーを配しているのがポイント。また、エリを高く設定することで風の侵入を防ぐので、ネックウォーマーなしでも寒くない
ソデ口裏のムートン
オリジナル同様にインナーリブ仕様となっているため、ソデ口から風が入ってくる心配なし。さらにニュージーランド産の最高級ムートンを配することで保温性もアップ。冬期中のライディングでも安心して使える作りとなっている
リバーシブル仕様のベスト
オリジナルのN-3Bと比べて、もっとも異なる点が脱着できるライニングベストを装備している点だ。しかもタイガーストライプカモとウッドランドカモのリバーシブル仕様となっており、単体で着用することが可能である
メイドイン桐生
フリーライドの二渡さんが頑なに桐生を拠点とする理由がその生産背景。古来から繊維工業の街として栄えている桐生には、日本を代表するファクトリーが点在し、密にコミュニケーションを取って、もの作りを行っているのだ
