ハーレーの【3拍子】って何のこと!?
最新のハーレーに乗っていると、あまり馴染みがないかもしれないが、「ドコトッ、ドコトッ!」という独特のリズムを奏でるアイドリング音を聞いたことはないだろうか!? コレこそが「3拍子」といわれるものだ。だが大半は、わざわざカスタムすることで、このリズムを奏でている。なぜそんなことをしているかといえば、1984年までの「ショベルヘッド」と呼ばれるエンジンが搭載されていた、いわゆる昔のハーレーは、この不規則なリズムを奏でていて、これこそが“ハーレーらしさ”に欠かせないものになっていたからだ。では、なぜそんな不思議なリズムを奏でるのだろうか!? その理由は、ハーレーならではのVツインエンジンにあった!!
そもそもハーレーは規則正しいリズムで爆発していない
「3拍子」と例えられるハーレーの独特なアイドリング音。しかし、2気筒エンジンにもかかわらず“3拍子”という奇数の鼓動を奏でることを不思議に思う人もいるかもしれない。その秘密はハーレーならではのVツインエンジンにある。
これは45度Vツインというレイアウトに加え、2つのピストンが1つのクランクピンで連結されているため、前のシリンダーが爆発したときと、後ろのシリンダーが爆発したときとでは、クランクが回転する量が異なるうえに、前後でクランクを回す抵抗も違うため、回転スピードが速くなったり遅くなったりを繰り返している。これが低回転になるほど顕著になり、3拍子風に聞こえるというワケだ。だが、理由はそれだけではない
◆3拍子を奏でる、そのほかの要因とは!?
重いフライホイール
45度Vツインは変則的に爆発するため、低回転では特にクランクの回転がギクシャクしがち。回転が低ければエンストしやすくなるのだが、それを助けているのが重いフライホイール。大きな慣性力によって低回転でもゴロンゴロンと回り続けるのだ。
点火システム
ショベルヘッドまでのハーレーに採用されていた「ガバナー」という進角装置は、クランクの遠心力を利用しているため、その回転に合わせて点火する。そのため、低回転時の不規則な回転にもしっかりと追従するのだ。
ロングストローク
ピストンが上下する距離を「ストローク」、シリンダーの内径を「ボア」という。このボアよりもストロークの数値が大きいと、独特な鼓動感を生み出す要因になるのだ。
ノーマル状態で3拍子が出るのはショベルヘッドまで!?
回転スピードが速くなったり遅くなったりを繰り返しているハーレーの45度Vツインエンジン。これは低回転になるほど、ギクシャクが強まってエンストしやすくなってしまうのだが、それを助けていたのが重いフライホイールだった。クランクの回転慣性を増すことでエンストしにくい粘り強い特性としていたのだが、巡航速度が高まり、ハーレーにも高回転が求められるようになったことでフライホイールは下の写真のように軽量化されていったのである。
現行モデルは、なぜ3拍子が出ないの!?
「ツインカム」エンジンは1000~1100回転でアイドリング
「ミルウォーキーエイト」エンジンは800~850回転でアイドリング
ショベルヘッドエンジンのアイドリングは600回転前後。つまりこれまでの理屈からいえば、「前後のピストンが1つのピンでクランクに連結された45度のVツイン」は、アイドリングを低くすれば3拍子になるということ。しかし、エボリューション以降の近代~現代のエンジンが3拍子が出せないのは、単にフライホイールが軽いということだけではない。現代のハーレーは点火タイミングが電子制御されていて、“アイドリング時から早めに点火するように”設定されているため、極端にアイドリングの回転数を下げると点火するタイミングが合わなくなってエンストしてしまう。さらには電圧も下がるなど、扱いにくさが出てきやすくなるのだ。