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ハーレーの足まわりを考える【その4】

ハーレー サス カスタム ケツ上げ ディメンション

ハーレーのサスペンションは広大なアメリカ大陸を走るために進化してきた。タイヤがグリップしにくいコンクリートの路面を坦々と長時間走り続けられるよう、疲れにくい乗り心地に特化して進化してきたのだ。対して、ここ日本では道路がアスファルトであることに加え、ワインディングも多く、さらに信号も渋滞も多い街中を走れば、ゴー&ストップを繰り返すことになる。アメリカと日本では、そもそもハーレーの足まわりに求められる性能が違うというワケ。そこで、日本国内でハーレーを安全に走らせるために必要なことを、その筋のスペシャリストとして知られる「サンダンス エンタープライズ」代表“Zak”柴﨑氏にうかがった。前回のリアショック編に続き、今回は車体のディメンションについて考えていこう。

安易なリアショックによるケツ上げは危険だ!!

かつては足りないバンク角を補うため、スポーツスターのリアショックを長いモノに換えるカスタムが多く見受けられたが、最近では“スピードクルーザー”や“パフォーマンスバガー”といった新しいカスタムの流行で、ダイナや現行ソフテイル、そしてツーリングモデルであっても“長いリアショックでケツ上げ”するカスタムが目立ち始めている。この際、最も気をつけなくてはならないのが「車体のディメンション」だ。

長いリアショックに交換するとフレームのネック角が起き上がり、トレール量が減る。すると、ハンドリングはクイックになるものの、車体は不安定になり、振られやすくなる。加えて、ハーレーのエンジンはとても重い。車重のあるバイクの車高をわずか1cmでも上げると、重さはその何倍にも感じるほど。つまり、振られやすい車体姿勢なうえにエンジンの重さが加わって、余計に振られやすくなってしまうのだ。万全策は、リアショックの長さはノーマルと同じにとどめ、バックステップ化など、ステップ位置を変更することでバンク角を深くとる方法。それでも足りないなら、サスの全長を長くし、理想的なディメンションに近づくよう、トレール量を補正するトリプルツリーなどのカスタムも必須となる。

トレール量とは!?

トレール量とは、フレームのネックの中心線が地面と交わる点から、タイヤの接地点までの距離(上のイラストの矢印で示した部分)のこと。トレール量が多いと直進安定性が増し、減るとハンドリングが軽くなって車体を寝かしやすくなる。しかし、その反面、寝かせるときのアプローチや、車体が傾いている状態のとき、接地感に不安が出やすい。

リアショックを長いモノに換えると、車体の後ろ側が持ち上がってフレームの姿勢は前下がりになる。そうするとネックアングルが起き上がってトレール量が減少。また、ブレーキング時にフロントフォークが沈むと同様のことが起きてトレール量が減少するため、こうした状況をあらかじめ想定して静止時のトレール量を決定しなければならないのだ。

理想的なディメンションには法則がある!!

リアタイヤの接地点とエンジンの中心を結んだ線とフロントフォークは90度で交わらなくてはならない。これが理想的なディメンションで、これがズレると乗り味も不安定なものになる。運動性能において重量物であるエンジンの重心位置は非常に重要で、安易なリアショックによるケツ上げやホイールの前後17インチ化などは辻褄合わせが大変になることは知っておくべきだろう。

ケツ上げするならフォークのオフセット量を見直すべし!!

リアショックのケツ上げは、ハンドリングがクイックになる反面、ハンドルが振られやすくなるため、リスクよりもタイムを優先するサーキットならではの手法といえるだろう。平坦なサーキットなら平気でも、路面の凸凹が多い公道でギャップを拾えば、収拾がつかなくなることもあるからだ。トレール量は、フレームのネック部とフロントフォークまでの距離、つまりフロントフォークのオフセット量で調整することができる。つまり、リアの車高を上げることで減ってしまうトレール量を、ネックとフロントフォークまでの距離を短くすることで増やすことができる(上の写真で例えると、中心部に対して、左右の穴を下方向に移動させることでトレールが増加)。つまり、ディメンションは補正できるのだ。

リアの車高を上げたときはもちろん、モデルによってはもともと少ないトレールを適正化する“トラックテック Φ39mm用トリプルヨーク”。純正とほぼ同じルックスながら、ネックシャフトとフロントフォークのオフセット量のみを変更し、ふらつき感を解消する。オフセット量は50mm、45mm、40mm、35mmの4種類を用意。旧型のΦ35mmフォーク用もラインアップしている

ご存じサンダンス エンタープライズ代表の柴﨑“Zak”武彦さんは、ハーレーに関する知識と技術に長け、日本のみならず世界にその名を馳せるエンジニア。エンジンだけでなく足まわりにも造詣が深い。

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