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ハーレーのFXRとダイナは何が違う!?【第1回 フレームの違い】

FXR ダイナ 違い

ハーレーのカスタムシーンで、いまだ人気の高い「スピードクルーザー」と呼ばれるスタイル。いまでこそベース車両に現行型の「ソフテイル」も選ばれるようになったが、少し前までは「FXR」や「ダイナ」が圧倒的多数を占めた。中でもFXRは、熱烈なハーレーファンからいまだ人気が高いことでも知られる。しかし、性能的にもルックス的にも進化を遂げたダイナではなく、40年も前に登場したFXRを選ぶ人が後を絶たないのは何故だろうか。それは見た目の違いだけでなく、走りのテイストという決定的な違いがあるから。というワケで、両車の違いを2回に渡って検証していく。今回は両車のフレームの違いに注目してみよう。

そもそも「ラバーマウントフレーム」って何!?

1980年に登場した「FLTツアーグライド」は、イギリス車のNORTONに採用されていた技術をヒントに誕生したラバーマウントフレームをはじめ、ハンドリングに影響が出ないようフレームにフェアリングを固定したほか、いち早く5速ミッションを導入するなど、それまでのハーレーとは異なった先進的なモデルだった

FXRとダイナに共通する特徴のひとつが、どちらも「ラバーマウントフレーム」を採用していること。しかし、そもそも「ラバーマウントフレームって何!?」という方も多いことだろう。まずはこれを説明すると、このフレームが誕生した背景には、1960年代後期から陥ったハーレー社の経営不振があった。その打開策を探るべく市場調査を行ったところ、ハーレーを敬遠する人の多くが「振動の大きさ」をひとつの理由にしていることがわかったのである。

ハーレーのように排気量が大きい2気筒エンジンの場合、高回転まで回せばどうしても振動が大きくなってしまうものだが、それは大した問題ではなかった。しかし、高速道路網が発展するにつれ【スピードを出せる環境が整ってきた】ことに加え、並列4気筒エンジンを搭載した日本製バイクをはじめ、他メーカーからも多気筒エンジンのモデルが登場したことにより【高回転までスムーズに回るエンジン】を求める人が増えたのだ。結果、振動の大きさを煩わしく感じる人が目立ち始めたというワケである。

そんな、振動を嫌う“アンチハーレー層”を取り込むべく1980年にデビューしたのが「FLTツアーグライド」だ。これに初めて採用されたのが「ラバーマウントフレーム」という新しいフレーム構造。これは、エンジンとミッションをガッチリとボルトでつなぐことでほぼ一体とし(※ハーレーのビッグツインモデルはエンジンとミッションが別体式なのだ)、これにラバー(ゴム)を介することでフレームに“宙吊り状態”でエンジンを搭載するというもの。

ハーレーらしさあふれるエンジンテイストはそのまま……というより、1978年から排気量が拡大されたのでむしろ振動は以前に増して大きくなっているのにも関わらず、不快な振動はフレームを通してライダーに伝わらない。そのためロングランも難なくこなせる画期的なフレームだった。この開発には、後に「ビューエル」を生み出したエリック・ビューエルもチームに名を連ねていたことも有名な話だ。

FXRのフレーム

1982年に登場し、1994年まで生産されたFXR。写真は最終モデルとなった1994年型の「FXRスーパーグライド」。見た目に最もわかりやすいダイナとの違いは、ちょうどシート下に見える三角形のようなパイプワークだ。そのため、サイドカバーを備えていることも特徴といえる

革新的な新技術は、1971年に登場したビッグツインエンジン搭載の“スポーツクルーザー”、「FX」シリーズにももたらされることとなった。その第1弾が、1982年にデビューした「FXRスーパーグライドⅡ」だ。フレームのネック部分を変更した以外は基本的にFLTツアーグライドのラバーマウントフレームを踏襲。ほかにも5速ミッションを採用するなど、よりスポーツ路線を強調したモデルだったのだが、今回はいまなお「ハンドリングマシン」として多くのファンをもつFXRフレームについて掘り下げてみよう。

エンジンとミッションがフレームに直接マウントされず、宙吊り状態で搭載されるため、エンジン&ミッションでフレーム強度を補うことはできなくなった。そこでフレーム単体で強度を確保するためメインチューブは角型なったほか、それまでのモデルよりもパイプ径が太くなっている。また、構造上エンジンが振動によってフレーム内で揺れ動くため、エンジンとフレームが衝突しないよう、ある程度のスペースを確保する必要もあった。

◆右の図はフロント側のエンジン下部を横から見たもの ◆左の図は一番上の四角形がエンジン、その下の四角形がミッションで、それをスイングアームでサンドイッチした状態を上から見たイメージ。どちらもグレーで色をつけた部分がラバー(ゴム)だ

フロントは、フレームのダウンチューブ下部にある左右をつなぐプレートに、ラバーを介してエンジン前部をマウント。対してリアは、エンジンとミッションをボルトでつないでほぼ一体化し、ミッション後部にスイングアームの軸受け設け、ラバーをその左右に介した【計3点支持】となる。スイングアームを両側から固定しているために安定感が強く、コーナリング中でも左右に振られるような感じが少ないために、今なお“ハンドリングバイク”としてファンに愛されているというワケだ。とはいえそれは、あくまでも40年前のハーレーとして考えた場合、ということは付け加えておこう。

ダイナのフレーム

初めてダイナフレームを採用して1991年に登場した「FXDBダイナ スタージス」が好評だったことを受け、次第にダイナフレームモデルのラインアップが充実。このモデルは1993年に登場した「FXDLダイナ ローライダー」の1996年モデル。FXRとは異なり、シート下の三角形のパイプワークを廃止し、往年のショベルヘッドを彷彿とさせる、サイドカバーを持たないスタイルとなった

FXRは、そのスポーティなハンドリングを歓迎するファンも少なくない一方、シート下の、トライアングル形状のフレームが「ハーレーらしくない」と、賛否が分かれる結果となった。そこで伝統的なショベルヘッドエンジン時代のFXのスタイルを再現しつつ、フレーム強度をより高めた新型フレームが登場。1991年に登場した限定モデル「FXDBダイナ スタージス」に初めて採用されると、これが大変好評だったことを受け、以降徐々にダイナフレームモデルを増やしていった。結果、FXRは1994年モデルを最後にラインアップから姿を消したのである。

シート下にあった三角形のパイプワークが排除されたことが最も大きな特徴。FXRよりもさらに太くなったメインフレーム、そしてシート下などに、従来までの鋳物のラグにパイプを差し込んで溶接する「キャストラグ継法」ではなく、パイプに板を張り合わせて箱型にする「ガセット継法」を採用することで剛性が大きくアップした。コンピューター設計により、ルックスとスポーティな走りを高次元でバランスさせているのはもちろん、生産性も向上している。

◆右は単なるラバーではなくなったダイナのアイソレーター ◆中央はフロント側の支持部を横から見た図。黒い部分がエンジンで白いプレート部分がフレーム ◆左はリア側で丸い部分がエンジンのスイングアームの軸受け。その下部をアイソレーターで支える構造だ

ダイナフレームには独自のアイソレーターが採用された。ボルト留めのための芯材が入ったラバーを鉄板で挟んだ構造で、この部品を介してフレームをエンジンに搭載している。FXRフレームはスイングアームの左右にラバーを備えていたが、ダイナではミッション後部の下側を1点で支える構造となり、前後2点支持となった。ハンドリングバイクといわれたFXRフレームは高回転までエンジンを回すとかなり振動が乗り手に伝わっていたが、ダイナは振動を吸収する性能が高く、その問題を解消。終始安定した乗り味を実現している。

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