【H-Dカフェレーサー ファイル】#2 レーサーのディメンションで製作された最強のカフェ
クリップオンハンドルにシングルシート。そんなカフェレーサースタイルのカスタムを好む人は多いが、スポーティな国産車やヨーロッパ車をベースにするのでなく、アメリカ大陸という特異な環境に合わせて進化してきたクルーザーであるハーレーダビッドソンをわざわざ選び、カスタムして作りあげようなんて考える輩は、カフェレーサー好きの中でも明らかにクセ強めといえるだろう。そんな好きモノたちが、あくなき探求心とこだわりで製作したカフェレーサーにスポットを当てていくのが、この企画である。という前回同様のくだりだが、この企画が定着するまでずっとやっていく所存だ。
#2 レーサーのディメンションで製作された最強のカフェ
これは“XLCR”という1977年に登場したハーレー唯一のカフェレーサーが好きだというオーナーからの依頼を受け、宮城県にある「アスタリスク」が2011年に製作したスポーツスターだ。とはいえ、単純に昔風のカフェレーサーを作るのでは面白くないと考えたビルダーの星川英樹さんは“現代風にアレンジした最強のヤツ”を目指したという。
ひと際たくましくなった足まわりが目をひくが、パフォーマンスマシン製のホイールやブレーキといったハーレー用の定番カスタムブランドを使うのはもちろん、オンロードスポーツからオフロードまで、さまざまなジャンルの部品を使用しているのがユニークな仕上がり。また、国産スーパースポーツのディメンションに近づけるため、“フレームを前傾させて”ネックを立てるなど、数値をもとに製作していることもポイント。圧巻はリンク式のモノサスとなったリアまわりで、とある雑誌に載っていたホンダ“NSR”のレーサーの写真から数値を導き出して製作したという。
また、仮に2本サスのままここまでシート高を稼ごうと思えば、おのずとオフロード車のように長さのあるリアショックが必要になるワケだが、そうすれば見た目のスマートさは失われてしまう。そのためのモノサス化でもあったという。もちろん、1本のショックで支えることによって、しなやかな動きも実現。さらには車体前方の低い位置に移設したオイルタンクによって、重量配分もいわゆる後ろ寄りのハーレー的なものではなく、スーパースポーツのように前寄りになった。
そのハンドリングは、もはやスポーツスターの面影すらないシャープなものになっているハズだが、これを実際にカタチにできるアスタリスクの実力には感心するほかない。2012年の「LAカレンダーモーターサイクルショー」でアワードを獲得したことも納得の一台である。