【ヴィンテージH-D カスタム ファイル】“FLストリップ”とは違う、オリジナルスタイルを構築
一見すると“ボバー”スタイルだが、細かくディテールを見ていくと、単なるボバーというカテゴリーにはとどまらない、個性の強いカスタムだと気づく。これは「アーリーショベル」といわれる1968年モデルの“FLH”をベースに「インディアンオレンジ モーターサイクル」がカスタマイズした車両。純正がもつ雰囲気も好みだというオーナーだけに、カスタムを始めた当初は、すぐにオリジナルに戻せるような“ストリップ”程度のカスタムを考えていたという。ちなみにストリップとは、サドルバッグやフォグランプなどがふんだんに装備されたハーレーのツアラーをベースに、ひたすら部品を取り外していくという定番のカスタム。これなら部品を取り付けるだけで簡単にストック状態に戻せるというワケだ。
だが製作を進めるうち純正らしさは残しつつ、よりスタイリッシュになるよう、チョッパー風であったり、ボバー的であったりという、さまざまなテイストをミックスし、このスタイルに辿り着いたという。使用したパーツもただ闇雲に交換するのでなく、オイルタンクには“XLCH”用を使用したり、アエルマッキ用のメーターを取り付けるなど、ヴィンテージパーツを使用することで自然にまとめた。ほかにもワンオフで製作したメーターダッシュや、リアショックの内側を通るマフラーなどで、オリジナリティあふれる仕上がり。もちろんフレームには手を加えていないこともポイントだ。とはいえ、簡単にはストック状態に戻せないカスタムとなったが、いままでに見たことのないスタイルになったとオーナーは感激。もう元に戻す考えなどなくなってしまったようだ。
エンジンと干渉する部分をカットするなど、極限まで小さくコンパクトに作り直したタンク。その上部にはワンオフで製作したメーターダッシュが備わる。ライダーが見やすいよう、メーターの角度を起こして装着するなど、デザインだけでなく使い勝手も考慮した作りが見事だ。
ベンチマーク製のエアクリーナーをそのまま取り付けるのではなく、立体的なデザインになるよう造形にひと手間加えている。こうした加工も、ワン&オンリーなスタイルの実現に貢献しているのだ。
プライマリーは乾式化されているのだが、単にオープンプライマリーとせず、あえてケースを残しながら、ランダムなサイズと感覚でドリルド加工を施した。いにしえのレーサーを彷彿とさせるディテールが、重厚な雰囲気を醸し出している。
チョッパー風でもあり、ボバー風でもあるアップスイープマフラーだが、リアショックの内側を通すことでレーシーさが漂う仕上がり。有機的なデザインのステーもワンオフで製作。バイクが漂わせている雰囲気に見事にマッチしている。
細かいディテールはもちろん、パーツの取り付け角度も考慮しながら製作したというだけに、非常にバランスいいシルエットになっていることがわかる。オリジナルティあふれるカスタムでありながら、ハーレーらしさもしっかりと残したクールな一台だ。
【DATA】
取材協力/インディアンオレンジ モーターサイクル TEL093-701-0557