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ハーレー エンジンの構造や歴史、魅力などを徹底解説

ハーレーエンジンのどこがスゴイ?

1936年にOHVのVツインエンジンを発売してから現在までの長きにわたり、ハーレー社はこのエンジンレイアウトにこだわってきた……。とはいうものの「だから何?」というそこのアナタ! これを機会にハーレーのエンジンの魅力をおさらいしよう。

【1】いまだにOHV(オーバーヘッドバルブ)方式

ほとんどのメーカーが採用していない旧いバルブ駆動方式のOHVをいまだに採用しているハーレー。他メーカーのバイクはOHC、またはDOHC化することでエンジンを高回転まで回せるようにして力を出したのに対し、ハーレーはOHVのまま、排気量を上げることで力を出した。これがハーレーならではの乗り味を生む結果となった。

<OHV>
オーバーヘッドバルブの略。シリンダーの上にバルブを配置し、カムの動きをプッシュロッドによってバルブに伝達する。
<OHC>
オーバーヘッドカムシャフトの略。シリンダーの上にカムとバルブを配置。クランクの回転をカムにチェーンで伝達する。
<DOHC>
ダブルオーバーヘッドカムシャフトの略。カムがバルブを直接動かすのでロスがなく、高回転域でのバルブ開閉も安定。

【2】パワーよりもトルク重視

OHVのまま排気量を上げて力を出したハーレーだが、排気量を増やしたことで1気筒あたりのストローク(ピストンが上下する距離)が長くなった。するとテコの原理でクランクを回す力、つまりトルクが大きくなり、エンジンの回転数は上げにくいものの、低回転から力を出せるハーレーらしい乗り味が誕生。また、ストロークが長くなれば上下方向に大きな振動が発生するが、ハーレーは重いフライホイールを用いることで一発一発の回転脈動を低く安定させた。それもまた低速からの力強さを生み出す要因となった。

【3】独自の乗り味を生む同軸クランクの45度Vツイン


進行方向に対して縦に搭載されたV型2気筒エンジン。そして前後のシリンダーの角度が45度で、ふたつのピストンを1本のピンでクランクに接続したレイアウトも独特な乗り味の要因のひとつ。これは、要するに超巨大な単気筒エンジンのようなもので、前後のピストンにかかる爆発力がひとつのクランクに伝わり、ひいてはそれが後輪に伝わるため、リアタイヤが路面を蹴るような独特な加速フィーリングになる。45度による不等間隔の爆発もそれをさらに明確に伝えてくれることに貢献。国産メーカーのVツインは、エンジンをスムーズに回すためにクランクを各シリンダーに配置するケースが見られるが、それではハーレーのような味わい深いフィーリングにはならないのだ。

【4】唯一無二のオリジナルエンジン

1960年代以前は、ハーレーやBMWといった現在も活躍するメーカー以外にも、ノートンやBSAといった名のあるメーカーが全盛だった。各社とも自社が生み出したエンジン方式にこだわりを持ち、それだけに、各社は自社製エンジンの性能向上に心血を注いだ。しかし、より高性能なエンジンが求められ、それに適応できないメーカーはどんどん淘汰されていった。そんな中、ハーレーは頑なにそのスタイルを守り、トルク重視のエンジンも個性として認められるようになった。だからこそ今がある。ハーレーが空冷OHV方式のVツインエンジンにこだわり続けているのは、そんな理由もあるのだ。

ハーレーらしさを感じる“3拍子”を奏でるエンジンの秘密


ハーレーは回転数を下げるとドコトッ、ドコトッという不規則なリズムでアイドリングする。この独特なリズムが“3拍子”といわれる由縁だ。ハーレーのメカニズムがよくわかっていなかった時代は、回転を下げると4回の爆発のうちの1回が失火して、ちゃんと爆発していないのでは? など、ウソっぽいウワサ話もあちこちで囁かれていたほど。

この独特なアイドリング音は、ハーレーのアイデンティティといえる“45度Vツイン”というレイアウトが主な要因。しかも、2つのピストンが1つのピンでクランクに連結されているため、2つが非常に近い感覚で爆発する。そのため、2回の爆発が重なって1回の音のように聞こえて、ドコトッ、ドコトッというまるで3拍子のような“変則4拍子”を奏でるというワケだ。

また、Vツインという基本構造に加えて、フライホイールの重さや点火システムなども影響するので、旧車はそうした原因が重なって、3拍子を奏でやすい状態にあった。特に今よりも重いフライホイールを採用していたショベルはもちろん、それ以前のナックルヘッドやパンヘッドも当然3拍子は出るのだ。ちなみにツインカムやミルウォーキーエイトのアイドリングはまったくリズムが違う。

3拍子を奏でる要因は?

<点火システム>

ショベルに採用されていたガバナーという進角装置は、クランクの遠心力を利用しているため、独特なリズムに合わせて点火。低回転時の不規則な回転にも追従した。

<45度Vツイン>

45度という狭い角度のVツインエンジン。しかも、前後のピストンが1つのピンでクランクに連結されているため、独特な爆発間隔を生み出している。低い回転ではそれがより顕著に現れる。

<重いフライホイール>

45度Vツインは、変則的に爆発するため、クランクの回転がギクシャクしがち。回転が低ければエンストしてしまうが、それを助けるのが重いフライホイールだ。大きな慣性力によって低い回転でも回り続ける。

<ロングストローク>

ピストンが上下する距離をストローク。シリンダーの内径をボアという。ボアよりもストロークの数値が大きいと、独特な鼓動感を生む。

現行モデルでも3拍子は出せる?

現行モデルも昔のエンジンと同じ、45度のVツイン。3拍子を奏でる基本構成は同じだ。だから、基本的にはどのエンジンでも3拍子は出せる。現行エンジンでそれを出すためには、まずアイドリング時の回転数を低くする必要がある。実際の数値でいえば600回転~700回転が、多くの人がイメージする3拍子のリズム。800回転ぐらいでも3拍子風のリズムは出るが、それっぽく聴こえない。注意点は、アイドリング回転数を落とすと点火のタイミングがズレてしまうことで、それを調整しないとキレイな3拍子が出るようにならないのだ。

“現代の3拍子”を実現するには適切なチューニングが必要

結局、現行モデルで3拍子を出すということは、エンジンにブレーキをかけて、アイドリングのスピードを遅くするようなもの。これは、何かの拍子にストンとエンストしやすい状態ともいえる。走っている最中にエンストしにくくするためには、インジェクションチューニングが必須だ。

走行状態から、停止するまでの点火タイミングの落とし方や、IAC(アイドルエアコントロール)の位置を調整することで絶妙なマッピングを作る。また、10万km走ったエンジンと新車の状態では、エンジン内のシール性も異なるうえ、吸排気系パーツに何を使っているかによっても違ってくるので、一台一台に合わせた、高度なチューニング技術が必要になる。同じ年式のモデルであっても「アイツのは600回転まで下げてもエンジンが止まらないのに、オレのは700回転でエンストしてしまう……」など、チューニング後のベストな状態もまた一台一台異なるということも覚えておきたい。

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