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【いま最注目の“ちょい旧ハーレー”】ツインカムは何が違う!? その1

「ツインカム」エンジン搭載の“ちょい旧ハーレー”は、いまや型遅れとなってしまったせいか、中古車もリーズナブルな価格のモノが多かったため、これでハーレーデビューする人も少なくなかった。しかし、コロナ禍で状況は一変しつつある。最新の2021年モデルがディーラーに入荷し始めているものの、製造に遅れが生じ、いまだ新車の入荷が安定していない状況。さらにはソーシャルディスタンスへの関心の高まりからバイクそのものに注目が集まっているため、ちょい旧ハーレーの値段も全体的に上昇しているのだ。それを考えれば、決してお買い得とはいえなくなってきているのだが、それでもなお注目度は高い。これは価格の安さだけでなく、ちょい旧ハーレーだけがもつ魅力があるからにほかならない。というワケで、ちょい旧モデルの代表格、ツインカムは何が違うのかについて迫っていこう。

ちょい旧ハーレーは、いま一体いくらなの!?

以前よりも値段が上昇しつつある“ちょい旧ハーレー”。ここでは、それが実際いくらぐらいなのかを紹介していこう。中古車といっても、それぞれに程度は違うワケで、それによって値段も変動していくワケだが、新車に近いコンディションであり、なおかつ新車並みの保証がつくというハーレーディーラーで販売されている「ハーレーダビッドソン認定中古車」に的を絞って紹介。価格は一般的な中古車と比較して高価だが、しかし新車並みのアフターフォローが受けられるというメリットがあるのでオススメだ。

2016年式 FLTRXS ロードグライド スペシャル

価格:258.8万円 走行距離:4503km

2016年式 FLSTFBS ファットボーイS

価格:248.8万円 走行距離:8695km

2017年式 FXDLS ローライダーS

価格:259.8万円 走行距離:1万9557km

ツインカムエンジンは何が違う!?

2017年から登場した現行型エンジンが“ミルウォーキーエイト”だ。空冷OHVの45度Vツインという昔ながらの構造は守りながらも、4バルブ化やツインプラグ化など、ハーレー最新のメカニズムを採用しているのが特徴。では型遅れになってしまったツインカムはダメなのか!? といえば、実はメリットも少なくない。というワケで、ツインカムならではの特徴とメリットを、ちょっとマニアックな視点から解説していこう。

その名の通りに2本のカムを装備

アメリカの高速道路の制限速度が75マイルに引き上げられたことで、ハーレーにはハイスピード化が求められた。エボリューションよりも高回転化、そしてさらなるハイパワー化を実現するべく、フライホイールを軽量化。さらに高回転域でも正確にバルブ開閉ができるよう、前後のシリンダーごとにカムを独立させたのである。カムを2本に分けることでプッシュロッドへの負担を軽減させると同時に、高回転域での追従性が向上。ビッグツインに採用されてきたハーレーの歴代エンジンの中でも、カムが2本あるのはこのツインカムだけ。歴代ハーレーの中で最も高回転まで回せるエンジン(※高回転とはいっても、あくまでもハーレーの中に限った話である)なのだ。

ツインカムの場合【採用年:1999~2017年】

OHV方式を採用するハーレーの場合、カムはクランクケース側にあり、プッシュロッドを介してロッカーアームを駆動することでバルブを開閉している。このエンジンのカムを2本としたのはバルブ開閉のタイミングをより正確に行うため。1本では高回転域になるほどに正確性が欠けるためだ。つまり高回転域を実用的に使えるようにすることでハイスピード化に対応させたのである

エボリューションの場合【採用年:1984~1999年】

ハーレー初の市販OHVエンジン“ナックルヘッド”が誕生した1936年以来、基本となる構造はそれを踏襲していた。ツインカム以前のエボリューションエンジンも同様で、すでにハイスピード化は求められていたが、従来の1カムのまま、フライホイールの軽量化などでそれに対応していたのだ。1本のカムシャフトで前後シリンダーのバルブ駆動を賄うため、プッシュロッドの間隔がツインカムよりも狭いことがわかるだろう

ミルウォーキーエイトの場合【採用年:2017年~】

2017年から採用された現行型エンジンの“ミルウォーキーエイト”。高回転を重視したツインカムに対し、現行型は主に低中回転を重視して設計された。そのためカムはあえて1本に戻されている。これにはパーツ点数を減らすことで騒音を抑えたり、シンプル化することでトラブルを回避する狙いがあると思われる

側方から空気を導入するハーレーは、むしろ2バルブのほうが効率的!

現行型(ミルウォーキーエイト)から4バルブを採用したビッグツインのエンジンだが、ロングストロークで、なおかつ横から空気を導入するハーレーのようなエンジンの場合、むしろ2バルブのほうが適している。なぜなら、吸気バルブを通った混合気はスワール(横向きのらせん)を描きながら充填される。ピストンの上下運動する距離が長いロングストロークエンジンの場合は、特に充填効率がよいとされ、加えて側方から吸気する(サイドドラフト)ハーレーは、吸気バルブまでそのまま抵抗なく混合気が通るので、とても相性がいいのだ。対して4バルブの場合、上面からタンブル(縦向きのうず)を描くように充填されるため、ショートストロークエンジンで、かつ上から吸気する(ダウンドラフト)に向いているというワケだ。

従来の2バルブを踏襲するツインカムの場合

横から空気が入るハーレーには2バルブが適している。その理由は吸気バルブを通った後の混合気の流れ方で、燃焼室の壁に沿うようにシリンダーに充填されるため、横向きのらせん(スワール導入)を描くのだ。これが仮に上から空気を導く仕様だったなら、乱気流が起きやすく、むしろ充填効率は下がってしまうというワケだ

横向きのらせんを描いて導入される混合気の流れ。ハーレーのような側方吸気、さらにロングストロークエンジンにはこちらの方が向いているのだ

本来の4バルブのメリットを追求したV-RODの場合

4バルブは、上方向から縦向きのうず(タンブル導入)を描いて混合気が入るため、ショートストローク型のエンジン向き。素早く充填するには上から空気を取り込むダウンドラフトがベスト。そのため、性能を追求した“V-ロッド”の場合、このようにダウンドラフトが採用されたというワケだ

縦向きのうずを描く混合気の流れ。上から入るためにダウンドラフト、かつバルブを通った後で渦を巻いてしまうため、ショートストロークのエンジンに向いているというワケだ

“環境性能型4バルブ”のミルウォーキーエイトの場合

高性能、ハイパワーのための4バルブというよりも、むしろ側方吸気などで起こるデメリットを効率よく燃焼させるために利用しているのが、現行型のエンジン。横から1カ所で吸気するため、まず前後シリンダーがその空気を奪い合い、さらに吸気側のふたつのバルブによって乱気流を起こしまくる機構なのだが、これを空気とガソリンをよく混ぜ合わせることに利用。こうすることで完全燃焼に利用しているというワケだ。

前後のシリンダーが空気を奪い合い、さらにふたつの吸気バルブによって乱気流を起こしまくっているのが現行型エンジン。しかし、この乱気流をガソリンと空気をよく混ぜ合わせることに利用しているというワケである

そもそも2バルブと4バルブで何が違う!?

ツインカムまでは2バルブ、そして最新型では4バルブとなったエンジンだが、そもそもバルブの数で何が違うのだろうか!? そもそもバルブとは、エンジン内の燃焼室に備えられた「弁」のこと。燃料と空気(混合気)を吸引する「インテークバルブ」と、燃焼室からガスを排出する「エキゾーストバルブ」がある。大排気量になるほど、たくさん導入でき、たくさん排出できるものが求められるワケだが、基本的にバルブを多くするのは、それを効率よく行うという目的からだ。

基本的な「2バルブ」とは

インテーク側にひとつ、エキゾースト側にひとつというシンプルな構造が2バルブ。歴代のハーレーはこの2バルブを採用しているが、効率のいい吸排気を目指していけば、ビッグバルブ化やカムのリフト量を増やすことが基本。だがバルブを大きく、長くしていけばフリクションが増大するなどの弊害も発生する

基本的な「4バルブ」とは

吸気と排気側にそれぞれ2本のバルブを備えることで、燃焼室の限られたスペースを上手に使いながら効率的な吸排気を実現するのが4バルブ。現在多くのバイクメーカーが採用している最も一般的なメカニズムともいえる。考え方としては、バルブ径が小さい、そして浅いリフト量でもドバっと入ってドバっと出せるというものだ

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