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いまこそ振り返る!【スポーツスターの歩み】 ~Kフレーム編・その2

水冷エンジンを搭載した新型が発表され、いま注目を集めている「スポーツスターS」。これによってハーレーの中でもとりわけ息の長いベーシックモデルが、いよいよ新たなステージに突入したといえるだろう。だが、あまりにも従来のスポーツスターとはかけ離れているルックスに、古参のファンは不安を覚えたかもしれない。とはいえ、その根底にはスポーツスターが最初にデビューした1957年のマインドが息づいているという。では、そのルーツとは!? というワケで、スポーツスターの歴史についてあらためて振り返ってみよう。今回はヴィンテージスポーツスターの中でも人気の高い“Kフレーム”モデルに迫る。

「Kフレーム」のスポーツスターとは!?

アメリカ建国200周年を祝し、1976年に限定発売されたスポーツスター、“XLH1000リバティエディション”。Kフレームを採用しているのはもちろんだが、サイケデリックなイラストで有名なポップアートの巨匠、ピーター・マックスによるグラフィックがタンクなどにあしらわれているのが特徴だ

人気のあった英国車に対抗して1957年に登場したXLスポーツスターは、エンジンこそOHV(オーバー・ヘッド・バルブ)方式の最新型を搭載していたが、車体はそれ以前からあったモデル、「K」から流用したものだ。というのもこのフレームは、高性能な英国車を参考にしてハーレー初のスイングアームとリアサスペンションを備えたもので、当時としてはハイスペックなシャシーだったため。このフレームを採用していた1957~1978年のスポーツスターは「Kフレーム」とカテゴライズされているのだが、それって実際何が違うの!? という点に注目してみよう。

1957年に登場した「XLスポーツスター」。英国車に対抗するために新開発のOHVエンジン(排気量883cc)を搭載したハーレーファン待望のスポーツモデルであったが、最初に登場したモデルはスポーツというよりも、ビッグツインの小排気量版のようなスタイリングだった。ちなみにエンジンのシリンダーとヘッドが鋳鉄であることから「アイアン」という愛称でも親しまれている
アメリカ市場で台頭してきた英国車に対抗するために、1952年に市場に投入された「K」。このモデルのために開発された排気量750ccのサイドバルブエンジンは力不足が否めなかったが、ハーレー初となるスイングアームとリアショックを備えた意欲作だった。この優れた車体をそのまま流用し、高性能なOHVエンジンを搭載することでスポーツスターが誕生したのだ

リアショックの取り付け位置

◆Kフレーム(写真は1974年型XLH1000)

◆CRフレーム(写真は1979年型XLH1000)

上の写真はKフレーム、下はその次世代型となる「CRフレーム」だが、比較するとリアショックの取り付け位置が異なっていることがわかる。Kフレームはライダーのおしりの下にリアショックを配置。しかしシート周辺やリアショックまわりの強度が弱く、後年に登場するCRフレームではシート下に三角形のパイプワークを加えて強度アップを実現し、この問題を解決した。Kフレームは強度的に弱いとされているものの、シンプルな作りだからこそハードテール化も簡単に実現できる点などから、いまだ多くのファンに愛されている。

オイルタンクの造形

◆Kフレーム

XLHに採用されたオイルタンク。XLCHにはこれとは異なった造形のオイルタンクが採用されていた※詳しくは後述

◆CRフレーム

Kフレームと後年のCRフレームとで、両者の違いが最もわかりやすいのがオイルタンクの造形だ。シート下の三角形のパイプワークの中にすっぽりとタンクが納まっているCRフレーム(写真下)に対し、シート下のスペースが狭いKフレーム(写真上)のタンクは、リアバンク側のエキゾーストパイプと、やや前方に取り付けられているリアショックを避けるような造形としたほか、車体外側への張り出しも大きいことが特徴。だが、このぽってりとした造形もまた、ファンを魅了しているといっても過言ではないだろう。

ところで「XLCH」って何なん!?

デビュー翌年の1958年、スポーツ仕様のXLCH(写真左)とツアラー仕様のXLH(写真右)をラインアップに追加することで、英国車勢への対抗策を万全なものにした

満を持して1957年に登場したXLスポーツスターだったが、当時のファンはそれだけでは満足しなかった。そこで翌年投入されたのが、レース用のスポーツモデル「XLCH」とXLよりも装備を豪華にした「XLH」である。中でもXLCHは過激な走りができると話題となり、1959年にヘッドライトを装備したストリート仕様が登場。これが現代のスポーツスターの礎となったことは、そのルックスを見れば明らかだろう。では、このXLCHとはどんなモデルだったのだろうか!?

◆1958年型 XLCH

デビュー間もないXLCHは、競技専用車でヘッドライトもなく、リアフェンダーも非常に短いものを採用。ガソリンタンクも小排気量車の「125S」から流用した小ぶりなものが装備されていた。また、フロントホイールを19インチとしてロードクリアランスを確保するなど、当時としてはオフロードイメージの強い“スクランブラー”だったという。このモデルだけに搭載されたパワフル仕様のエンジン、そしてロードモデルよりも18kgも軽量に仕上げられた車体によって過激な走りが楽しめると話題となり、1959年からヘッドライトを備えたストリート版が登場。大きな特徴としてはバッテリーを必要としないマグネトー点火だからこそ実現したといえるホースシュー型オイルタンク、そしてキックスターターのみの装備だった点だ。

◆1960年型 XLCH

◆1964年型 XLCH

◆1975年型 XLCH

初期モデルと後期モデルの違い

◆ホースシューオイルタンク(初期)

◆ランチボックスオイルタンク(後期)

XLCHの特徴がシート下にすっぽりと納まったオイルタンクだ。マグネトー点火でキックスターターのみの装備だったこともあってバッテリーも小型のものを採用していた関係で、オイルタンクが張り出すことなくシート下に収められていた。そのためXLHよりもスリムな印象がより際立っていたのだ。また初期のタンクはそのシンプルな造形から「ホースシュー」と呼ばれチョッパーカスタムなどにも用いられることが多いいまだ人気の部品。社外品が多く出回っているほか、当時の純正品は高額な価格で取り引きされている

XLHってツアラーだったの!?

当時のユーザーの趣向から、初期は深い前後フェンダーや16リットルの大型タンクなど、ツアラー的な重装備を充実させていたXLHだが、H-D社が衰退し始めた1960年代中盤になると次第に豪華ツアラー路線からスポーツ路線に寄せられていく。1970年代に入るとタンクも小ぶりな2.25ガロンに変更するなど、スポーツモデルのXLCHと見た目がほとんど一緒になっていったのである。

◆1959年型 XLH

◆1965年型 XLH900

◆1969年型 XLH900

◆1971年型 XLH900(ボートテール装着車)

◆1974年型 XLH1000

◆1976年型 XLH1000

◆1978年型 XLH1000 H-D創業75周年記念車

KフレームのXLH、年式による違いは!?

XLHはKフレーム最終モデルとなる1978年までの間にさまざまな変更が行われた。ここではさっくりとではあるが、XLHの年式ごとの違いについて紹介しよう。

【1959年】XLHにライトを覆うナセルカバーを採用。どっしりとした見た目に

【1965年】容量13リットルの通称「亀の子タンク」をXLHに採用。バッテリーが12ボルト化された

【1967年】XLHのナセルカバーを小型化。XLHにセルスターターが装備された

【1968年】XLHのキックスターターを廃止

【1971年】ナセルカバーを廃止。XLCHと共通のヘッドライトまわりに

【1973年】XLHにも2.25ガロンタンクを採用

XLCHとXLHの共通の変更点

ここではXLCHとXLH、どちらにも施された共通の改良点を紹介しよう。とはいえ、細かく見ていけば変更点は多岐に渡る。ここで紹介するものがそのすべてではないのでご注意を!

エアクリーナー

1966年、その形状から通称「ハム缶」と呼ばれているエアクリーナーに変更された

タイマーカバーの増設

1970年、それまでの手動点火タイミングを自動化。カムカバー部分に新たにタイマーカバーが増設された

ロッカーカバー形状

1971年にロッカーカバーの形状を変更。ちょうど中央に凹みがあるデザインが後期型だ

1970年以前のロッカーカバー

1971年以降のロッカーカバー

排気量

1972年に従来の排気量883ccから1000ccに拡大。圧縮比は9.0:1で最高出力は61hpを発揮した

フロントブレーキ

1973年より、フロントにディスクブレーキを採用した

シフトペダル

1975年、英国車などにならって右チェンジとしていたソフトペダルを左チェンジに変更

1974年までの右チェンジ

1975年の左チェンジ化で右側はブレーキペダルに

プライマリーカバー

Kフレーム時代にプライマリカバーは3回変更を受けた。また、1972年の排気量拡大に伴って排気量を示す数字も「1000」に変更されている

1957~1966年

1967~1970年

1971~1978年

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