いまこそ振り返る! 【スポーツスターの歩み】~CRフレーム編
すべてを刷新して登場した「スポーツスターS」。水冷DOHCエンジンにはじまり、各種電子デバイスなど最新のテクノロジーが注入され、いよいよハーレーも新時代に突入したといえるだろう。だが、従来のスポーツスターからあまりにもかけ離れたルックスに、古参のファンは不安を覚えたかもしれない。とはいえ、その根底には“スポーツモデル”として最初にデビューした1957年モデルと同じマインドが息づいているという。では、その起源となったものとは!? というワケでスポーツスターの歴史をあらためて振り返るこの企画。今回は歴代モデルの中でも“第2世代”にあたる“CRフレーム”のスポーツスターについて紐解いていこう。
「CRフレーム」のスポーツスターとは!?
1957年に登場して以降、ハーレーダビッドソンのスポーツモデルというポジションを担っていたスポーツスターだが、高性能な海外製バイクが次第に人気を集めるようになり、1970年代になると、スポーツスターだけでなく、もはやハーレーそのものが“時代遅れ”になりつつあった。そこで1969年よりAMF(アメリカン・マシン&ファウンドリー)社の傘下となっていたハーレー社は、ラインアップの強化を図ることとなった。そうして1977年に登場したのが「XLCR」だ。既存のラインアップにはないまったく新しいスタイリングで注目を集めたのだが、これを実現するにあたって新たに開発されたのが「CRフレーム」である。しかし結局、XLCRはセールス的に失敗に終わってしまったのだが、従来モデルのウイークポイントを克服した新型フレームは、1979年からスポーツスター全モデルに採用されることとなったのだ。
新設計された通称「CRフレーム」
新型フレームはスポーツスター全モデルに採用された
XLCRってどんなバイク!?
当時ハーレー社のデザイン部門を担当していたウィリアム・G・ダビッドソン(ウィリー・G)の代表作のひとつで1977年に登場。そのコンセプトは今までのスポーツスターはもちろん、既存のハーレーにはなかったヨーロピアンスタイルの“カフェレーサー”だ。小ぶりなビキニカウルや低く短い一文字のハンドル、バックステップにカウル付きのシート、左右に振り分けられた通称“サイアミーズマフラー”など、いかにもカフェレーサーというスタイルだが、前後のアルミ製キャストホイールやフロントに備えられたダブルディスクブレーキ、リアにもディスクブレーキを奢るなど、当時としては非常に豪華な装備も特徴のひとつであった。
しかし、この手の他社製バイクと比較するとエンジンも車体も劣っていただけでなく後発の登場となったことに加え、昔ながらのスポーツスターファンにとってはハーレーらしからぬスタイルが仇となり、わずか2年でラインアップから姿を消すこととなった。その間に生産されたのはわずか3123台。皮肉なことに、これによって希少価値が高まったことで、今ではコレクターズアイテムとして高い人気を誇っているのだ。
スタイリッシュさが際立つ、ウィリー・Gの傑作デザイン
どことなくフラットトラックレーサー「XR750」を彷彿とさせる角張った形状のタンクや鋲を打ったようなデザインのシートだが、こうしたディテールは“カフェレーサー”と呼ばれたスタイルの象徴でもあった。また、カラーリングを黒1色とし、タンクには存在感のあるバー&シールドのエンブレムを付けるのみとするなど、見た目にもシンプルでカスタム感あふれるもの。また、ビキニカウルやシンプルなフロントフェンダーなどもリアルな走り屋的雰囲気に欠かせないものとなっている
ハンドルはセパレートタイプでこそないものの、高さを抑えたドラッグバー、ステップはかなり後退した位置に取り付けられ、ライディングポジションは自然と前傾姿勢に。これもカフェレーサーには必須の装備である
エキゾーストパイプは、エンジン右側で1度集合して再び2本に分かれる独特な形状の通称「サイアミーズ(シャム双生児)」スタイル。左右に振り分けれたサイレンサーもXLCRならではの特徴といえるだろう