【H-Dカスタム インスピレーション】#3 チョッパー的手法が息づく“大人のバガー”
我々のカスタム意欲を刺激してくれるのは、有名ショップの手がけた“フルカスタム”だろう。この企画では、あえてそんなフルカスタム車両に的を絞って紹介していく。内容やコストを考えれば夢のまた夢かもしれないが、カスタムのヒントを与えてくれるのは、まさにこうした究極の一台なのだ。
世界のKEN’S FACTORYが製作したバガー【URBAN BISON】
その技術力の高さはもちろん、類稀なるセンスで世界に名を馳せる「ケンズファクトリー」。オリジナルパーツも数多くリリースし、いまやパーツメーカーとしても世界中から注目を浴びる、カスタムシーンを牽引するショップのひとつだ。ここに紹介する一台は、そんな“ケンズ”が、日本で“バガー”というスタイルが流行し始めて間もない2011年に製作した車両。その当時開催されていたカスタムショーでは、バガースタイルが数多くを占めるようになっており、ビルダーの永井さんはそんな流行を見て「みな同じパーツを使っているし、ずんぐりむっくりしていてカッコよくない」と感じていた。その答えとして、2011年モデルの“FLHXストリートグライド”をベースに製作したのがこの「アーバンバイソン」だ。
23インチの大径フロントホイールによる存在感あるフロントまわりから、ドロップキットを組み込んで低さを強調したシートへと自然なラインでつながっていくシルエット。これは、バガーというよりもチョッパーのディメンションに近い。都会的なルックスでありながら長距離ランを楽にこなせて、ハイスピードも快適。このアーバンバイソンと名づけられたバガーには、ショーモデル級のチョッパーであれ、“走りが楽しめるマシン”を目指すケンズならではのこだわりがしっかりと息づいている。
フロントフォークを寝かし、フロントに大径ホイールを履くという手法はバガーカスタムにおいては定番なのだが実際には、まともに走れないものも少なくない。しかし、あえてネックをストレッチし、フォークを寝かせながらも適正なトレールに調整したことで、ハンドリングが重すぎたり、突然ガクンと切れ込んでしまうこともないという。また、サスペンションもしなやかに動くようにセッティングされ、ハイスピードクルージングも余裕でこなせるポテンシャルを備えているのだ。
グリップやミラーなど、ケンズならではのハイクオリティなビレットパーツでドレスアップされたハンドルまわり。タンクキャップやコンソール部にもアクセントを加えることで統一感を強調している。
ヘッドライトをハーレー純正のLEDに換装。オリジナルのウインカーやマーカーライトホルダー、さらにヘッドライトにリムを加え、ビレットパーツが印象的な、ケンズ流の顔つきになっている。
フロントまわりのワンポイントになっている削り出しのフォークブーツもケンズオリジナル。これに交換するだけで足まわりの印象がガラリと変わる。
ホイールはレブテック製の23インチ。これに合わせたフロントフェンダーはワンオフで製作したものだ。アクスルシャフトのカバーも統一感のあるデザインのオリジナルに交換している。
レブテック製の部品を使用して106キュービックインチまで排気量を拡大したツインカム。そのパワフルな乗り味もさることながら、パンヘッドをオマージュしたデザインのロッカーカバーをはじめ、各部にケンズオリジナルパーツを使用することでエンジンの雰囲気をガラッと変えた。エアクリーナーはサイクルビジョン製だ。
フロアボードやブレーキペダルもケンズオリジナルの削り出しパーツに交換している。
ファットバガーズ製のドロップシートキットを使用してシート高をグッと低くしている。シートは同キットのものだが、このバイクに合わせて「バックドロップ」が作り直したもの。サイドカバーにもケンズ流のアクセントを加えることでデザインの統一感を図った。
デザインを合わせたテールランプとウインカーをサドルバッグに埋め込んでいる。ノーマルとは明らかに異なったルックスがバイクに迫力を与えている。
排気量を拡大してトルクアップしたエンジンを、しっかりと堪能できる車体に仕上げられたアーバンバイソン。チョッパー的なシルエットながらも、決して見た目ばかりを追求したカスタムではないのだ。
【DATA】
取材協力/ケンズファクトリー TEL052-354-6122