鉄馬乗り的 銘品図鑑 TT&COMPANY「スーパーマグナム レザーリムショット」
世には銘品と呼ばれる優れたプロダクトが、数多く存在している。そんなマスターピースを鉄馬乗りの目線でピックアップ。ハーレーライフをより充実させてくれる相棒になってくれることだろう。今回はヴィンテージヘルメットの風合いを再現したTT&COMPANYの「スーパーマグナム レザーリムショット」をご紹介。
問い合わせ/ティーティー&カンパニー TEL03-6638-8698 https://www.ttandco.com/
現代の安全基準で構築した名作
ここ10年でヴィンテージモーターサイクルに関連するものが、軒並み値上がりしている。ハーレーの車両は言わずもがな、パーツやアクセサリーも高騰中だ。中でも顕著なのがヘルメット。特にベルの名作“500 – TX”は凄まじく、コンディションのいいものは、数十万という相場に。なかなSG規格を取得した画期的なリプロヘルメットの先駆か出物がないことに加えて、安全面での要件を満たしておらず、オブジェ的な要素が大きい。
しかしヴィンテージヘルメットのようなシェイプは欲しいけど、安全性は譲れないというジレンマを解消したのが、TT&COのスーパーマグナムだ。ヴィンテージヘルメットのリプロダクトでも、日本の安全基準であるSG規格を取得しているのは極一部であり、このジャンルを確立させた功労者と言っても過言ではない。このSG規格を取得したスーパーマグナムは、代表の高橋さんのヴィンテージへの造詣の深さと、強い愛情があったからこそ実現した。
「TT&COは、2000年にヴィンテージハーレーを中心としたカスタムショップとしてスタートしました。旧きよき時代のアメリカのモーターサイクルシーンに多大な影響を受けており、特に1960〜1970年代のバイカーズクラブのカルチャーに衝撃を受けたんです。ショップをオープンしてから、車両やパーツを探しにアメリカへ定期的に訪れていたところ、スワップミートやフリマで、今では10〜20万円するようなヘルメットが2〜5ドルくらいで転がっていました。この手のヘルメットは先輩方が被っており、いつかは手に入れたいと思っていたので、いろいろと買い集めました。ただヘルメットとしての本質を求めるとヴィンテージは安全性に不安がありますし、内装やサイズに問題があることが多かった。そんな悩みを解消しようと2011年にヘルメット作りをスタートしたんです」
こだわったのは、日本のヘルメットの安全基準をクリアしながらも、限界までシェイプした小振りなシルエット。しかもヴィンテージの趣を残しながら、日本人の骨格にしっかりと合わせるという画期的な取り組みだった。これが思った以上に大変だったと語る。
「ヘルメットは、ざっくりと言うとCADで設計してから鉄の塊を削って型を作り、強化プラスティックでベースを製作してから、安全基準の試験データとすり合わせて作り込んでいきます。ひとつの形を作るのに1から2年かかるうえに、莫大な資金が必要となり、本当に大変でした(苦笑)。根本には自分が欲しいもの、お客様が喜んでくれるものという思いがあり、そういう情熱があったからこそ実現できたと思います」
スーパーマグナム レザーリムショット
4万9940円
プロダクトデザイン史に残る名作であるBELLの500-TXをベースに、現代の安全基準であるSG規格をクリアして再構築。ヴィンテージ顔負けの両サイドのシェイプが最大の特徴で、さらに日本人の骨格に合わせたタマゴ型のシェルを組み合わせている
ハンドソーンによるレザーリム
実際にアメリカのヴィンテージヘルメットにも存在した意匠であるレザーリム。硬い帽体に、ベジタブルタンニン鞣しの極厚レザーを取り付けるため、高度な職人技が要求される。TT&COを象徴する意匠でもある
SG規格をクリアした安全性
スーパーマグナムは、ヴィンテージ顔負けの小振りなシルエットながらも、現代の安全基準をクリアしている。厳しいテストのクリアと造形美を両立するために何度も設計をやり直し、2年ほどかけて完成した。
ベルト部分も忠実に再現
500-TXのシェイプやシルエットだけでなく、センターにステッチの入ったベルトも見事に再現している。もちろん市場に流通しているものではなく、ヴィンテージから解析して、オリジナルベルトを製作
東京のファクトリーで生産
TT&COのアイコンになっているレザーリム。ヴィンテージで実在した技法であるが、それに対応してくれる職人がいなかったことから、自社で生産することに。現在では高い技術をもつ職人が作業をしているが、それでも縫いには早くても4時間ほど掛かる