【H-Dカスタム インスピレーション】#7 旧車チョッパーの雰囲気をツインカムハーレーで実現!!
我々のカスタム意欲を刺激してくれるのは、有名ショップの手がけた“フルカスタム”だろう。この企画では、あえてそんなフルカスタム車両に的を絞って紹介していく。内容やコストを考えれば夢のまた夢かもしれないが、カスタムのヒントを与えてくれるのは、まさにこうした究極の一台なのだ。
旧車チョッパーを作るノリでツインカムを仕上げた
この企画にたびたび登場しているとはいえ、ツインカムエンジンを搭載したハーレーであまり見かけることがないのが「チョッパースタイル」だ。日本の老舗ハーレーカスタムショップである「モーターサイクル・ デン」の店長を務める松永さんは言う。
「ツインカムはフレームが“美人”じゃないんです。よく女の子に例えるですけど、美人だったのに脱がせてみたら、あれっ!? みたいな(笑)」いわく、エボリューションエンジン時代のモデルまでは、フレームの作りにもショベルヘッドエンジン時代からの延長と受け止められる流れがあったが、ツインカム以降はコンピューターで計算して作られた工業製品のような雰囲気を感じるという。
2005年モデルの“FLSTCヘリテイジ ソフテイル クラシック”をデンに持ち込んだオーナーの希望は、「松永さんが乗る“ULH(※写真上・向かって左側のバイク)”と同じような雰囲気にしてほしい」というものだった。同じハーレーダビッドソンとはいえ、製造年に70年の開きがあるツインカムとULHだが、2台を並べたときにまったく違和感のないモノに仕上がったら面白いよね、というのが製作にあたってのコンセプトになった。
松永さんが所有する1937年モデルのULHに目を向けてみると、エンジンこそヴィンテージだが、シングルダウンチューブのフレームや、リアを大径な18インチとしたパフォーマンスマシン製のホイールなど現代的な新しさも組み込まれている。
「タバスコみたいなモノですよね。スパイスなだけであって“出来上がるひとつの料理=バイク”になる。ホイールはたまたまあったから履きました。そんな感じにしたかったんです」
ツインカムのソフテイルをベースに製作したこの一台も、松永さん流の「旧車チョッパーを作るのと同じノリ」ではあるものの、そのアプローチはULHとはまったく逆だ。タンクは社外品をベースに幅と高さを広げ、ツインカムの“角フレーム”を意識させない位置にマウント。スイッチ類をエンジンマウントに配置し、フレームまわりの配線をスッキリまとめた。
さらには、太いシートレールからさらにはみ出すオイルタンクに向けて、末広がりになるようにシートを製作した。大がかりなカスタムよりも全体のバランス作りに時間をかけた。
「気負わないカスタムのようでいて、いい感じの雰囲気を出すのは実は結構大変なんです。このバイクも10メートル離れて見たらツインカムとは気づかないでしょ? 速くてどこでも行けるし、僕の中でもツインカムは全然アリですよ。コレを見てツインカムも良いじゃんって思ってくれたら、僕としてもやった!! って思いますね」
フロントフォークはストックのツインカム用をスムージングしたもの。ヘッドライトはブラス製で、職人がヘラ絞りで作るデンオリジナルを装着している。
社外の既製品をベースに、ツインカムの骨格に合わせて幅を広げて高さも増した。小さくしていく旧車チョッパーの製作とは真逆の作業といえるだろう。
フレーム、オイルタンクへと末広がりになるようにこだわって製作したというシート。もちろんカットしたフェンダーストラットの処理にも気を使っている。
筆一本で描き上げたような、旧きよき時代の装飾品のようなトーンのペイントにすることで、手作り感や人の手による温もりを感じさせる表情を与えている。
デンオリジナルのステップボードを採用。真ちゅうの鋳物で製作されたパーツで、職人が仕上げるヘッドライトと合わせて人の手による温もりを感じさせる。
かつてのドラッグパイプマフラーは色気のない大味なものが多かった。あえてそんな雰囲気を出すために既存のマフラーをベースに車体から張り出すように作り直している。
【DATA】
取材協力/モーターサイクル・デン TEL0555-73-8115