波瀾万丈なハーレーダビッドソンの歴史を名車&エンジン、キーパーソンから徹底解説
1966-1983「会社の危機を乗り越え多くの名車を生み出した時代」
優良な経営を続けていたハーレーだが、1960年代には株式の買収攻勢にあい、独立した経営が危ぶまれるようになった。経営陣はハーレーのブランドと独立性を守るため、レジャー会社のAMFに資本提携を依頼し、同社の傘下に。AMFはその潤沢な資金を使って新たな工場を建設。生産工程の合理化を進めて出荷台数を増やし、ニューモデルも続々と開発した。しかし、急激な変革とコストカットは製品の品質低下を招き、多くのハーレーファンを失望させる結果になってしまった。創業家一族を含む経営陣は、ハーレーを再び優れたバイクメーカーに蘇らせるためAMFから独立する道を選択したのだった。
新世代エンジン、ショベルヘッドを搭載した「1966 FLHエレクトラグライド」
スポーツスターに搭載されていたショベルヘッドを、ビッグツインにも搭載。樹脂製サドルバッグや大型ウインドシールドなど、現在に受け継がれるスタイルを確立した。
チョッパーが流行した時代背景
1969年の映画『イージー★ライダー』に登場するキャプテンアメリカ号は、1960年代に花開いた、若者文化のカウンターカルチャーを象徴するアイコン的な存在。
伝統のアメリカンブランドを守ったAMF
株式の買収攻勢にさらされていたハーレーは、複合企業体AMF(アメリカン・マシン&ファウンドリー)と、ブランドを守るため1969年に資本提携を開始した。
ハーレー復活の象徴「1977 FXSローライダー」
当時のカスタムシーンを意識して設計されたローライダーは、発売と同時に爆発的な人気を博し、経営が低迷していたハーレーを蘇らせる原動力になった。
AMFからの独立
1981年、自らの資産を投じてAMFから会社を買い戻したボーン・ビールズやウイリー・G・ダビッドソンら役員たち。
現在に受け継がれるスタイルを確立した「ショベルヘッド」
ロッカーカバーを上から見ると石炭用ショベルに似ているので、ショベルヘッドの名がついた。1970年に発電機がジェネレーター(直流)からオルタネーター(交流)になり、ケースも変更。1966~1969年型をアーリーショベル、1970年以降をレイトショベルと呼ぶ。1978年後期より1200ccから1340ccになった。
1984-1998「最新技術によりファンを拡大」
1984年にショベルヘッドの後継エンジンとして導入されたのがエボリューションだ。このオールアルミ製のエンジンは非常に信頼性が高く、高速化したアメリカのハイウェイを巡行するのに十分なパワーを発揮した。エボリューションと同時に発表されたのがソフテイルだ。リアサスを車体下に隠し、リジッドのようなシルエットを実現したこのフレームは、ハーレー伝統の美しいスタイリングを復刻させることに成功。ファットボーイやスプリンガーソフテイルなどの名車を数多く世に送り出した。さらに1991年にはダイナグライドフレームが誕生し、スポーツクルーザーという新しいジャンルを開拓していった。
ハーレーオーナーズグループの発足
ハーレーのオーナーによって結成されたH.O.G.(ハーレーオーナーズグループ)は1983年にスタート。現在は全世界で100万人を超える会員が所属している。
オールアルミ製で信頼性抜群のエンジン「エボリューション」(別名:ブロックヘッド)
ハーレー史上初のオールアルミエンジンで排気量は1340㏄。ロッカーカバーが3ピース構造になっており、ブロックを重ねたように見えることから、ブロックヘッドとも呼ばれている。
1999-2016「排気量拡大を見据えた、新時代のハーレー」
21世紀を目前に控えた1999年、より現代的でパワフルなツインカム88が登場した。ツインカムという名称は、エボリューションまでは1本だったカムシャフトを2本に増やしたことが由来。これによってより高度なセッティングを施し、パワーアップすることが可能になった。一方、88とは排気量を示す数字で、88ci(1450cc)を表している。この排気量は時代に合わせてどんどん拡大していき、最終的には110ci(1801cc)に達するまでになった。他にも、ドラッグレーサーからフィードバックした水冷DOHCエンジン「レボリューション」を搭載するVロッドを発表するなど、新たな挑戦も行われた。
ハーレーは2003年に100周年を迎えた
創業100周年を記念して、世界各国でセレブレーションイベントを開催。
特別なエンブレムを付けた100周年カラーモデルも発売され、人気を博した。
時代に合わせどんどん排気量が拡大した「ツインカム」(別名:ファットヘッド)
チェーン駆動でつないだ2本のカムシャフトを搭載して高性能化し、排気量は1450ccにボアアップ。ファットヘッドと呼ばれ、後に排気量を1584cc、1689ccと増大。’07年からEFIを採用した。
2017-「新しいハーレー像を築き上げる」
6代目となるOHVビッグツインがミルウォーキーエイトだ。その名前は、ハーレーが創業した都市の名前と、市販車としては初めてとなる8本(1シリンダーあたり4本)のバルブを採用したことに由来する。吸排気効率が高まっただけでなく、ツインカムに比べてシリンダー径が大きくなって排気量も拡大。よりトルクフルになり、低速での扱いやすさも向上した。2017年のツーリングモデルから搭載。続いて、2018年には、ダイナとソフテイルを統合した新型ソフテイルにも採用。そのパワフルなエンジンは、「ゆったりしたツアラー」という従来のイメージを覆し、「スポーティで軽快」という新しいハーレー像を生み出している。
115周年を記念したイベントを世界各地で開催!
2018年はハーレー創業115周年の記念イヤーで、それを祝福するパーティーが、世界各国の正規ディーラーで行われた。
市販モデルとして初めての8バルブ
8バルブOHVは、かつてレーシングマシンとしては存在したが、量産市販車としては初採用。低速トルクが格段に高まっており、より扱いやすいエンジンになった。
ハーレーが創業した都市の名前を由来に持つエンジン「ミルウォーキーエイト」
1シリンダーあたりの吸気と排気バルブを2本ずつにし、吸排気効率を高めた現行ビッグツインエンジン。バランサーを内蔵して振動を軽減するなど、パワーだけでなく快適性も大幅に向上。排気量は1745㏄、1868㏄、1923㏄をラインアップ。
歴史も長く、奥の深いハーレーダビッドソンの世界だからこそ、独特な専門用語がある。記事内ではじめて出合う用語や、知っているようでボヤっとしている用語などあったら、「ハーレー専門誌『クラブハーレー』編集部がお届けするハーレーダビッドソン専門用語集」を見てみよう。きっと発見がいっぱいだ!