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インジェクションチューニングを語るスペシャリスト対談(後編)

スペシャル対談「チューナーの“味付け”とは何か?」

今や常識となっているハーレーのEFIチューニング。その重要性に早いうちから気づき、セッティング技術を高めてきたシャフトチューニングラボラトリーの栗原さんとセレクテッドカスタムモーターサイクルの西岡さん。このふたりのチューナーが日本のチューニング事情を語るスペシャル対談の第二弾。今回はチューナーの味付けについて語ってもらった。


シャフトチューニングラボラトリー
栗原和也さん

豊富な経験から、ライダーの乗り方に合わせたチューニングを行っている

シャフトチューニングラボラトリー
TEL048-501-7893
http://shaft-labo.jp

 

セレクテッドカスタムモーターサイクル
西岡竜一朗さん

街中の走行から長距離まで、オールマイティに走れることにこだわりチューニングを行う

セレクテッドカスタムモーターサイクル
TEL03-6424-8265
https://www.selected.co.jp

 

―― 前回に引き続き、シャフト栗原さんとセレクテッド西岡さんにEFIチューニングについて語っていただきます。前回はチューナーにとって最も重要なものは「味付け」だということでしたが、まずは味付けをする前の段階、どういう風にセッティング作業を行っているか教えて下さい。

西岡 いろいろな種類のデバイスを使ってみましたが、特別な要望がなければ「ディレクトリンク」をメインに使ってセッティングしています。

栗原 使いこなせるようになるまでけっこう大変じゃなかった?

西岡 そうですね。ディレクトリンクは純正のコンピューターのデータは使えないので、一から構築していかなきゃなりません。初めのころは、そこまで手持ちのデータがなくて、モデルやエアクリ、マフラー、カムなどに合うデータを作っていき、それを蓄積していきました。チューニングするときは、まずは条件が近いものを仮で入れて、シャシーダイナモで計測した情報をもとにマップの数値を変更していくという方法でセッティングしています。だからベースになるデータをどれだけもっているかがすごく大事だと思っています。

テクノリサーチ ディレクトリンク EFIチューニングキット

 

テクノリサーチ VCM-TR4

 

栗原 なるほど。僕は「FP-3」がメイン。これのいいところは、やっぱりノーマルのデータを使えるってこと。これに尽きる。要するに基準はすべて同じところから、吸排気の条件を加味した予測をまず立てて、書き換えていく。実際にシャシーダイナモで回してみて、ダメなところを修正していく。これだけでOK。別にサボっているわけではなくて、なるべくバイクへの負担を少なく、かつ確実に改善させてやることが重要だと思う。

バンス&ハインズ フューエルパック3

 

西岡 どちらにしても基準がしっかりないと作業は進みませんよね。

栗原 本当にそう。今主流になっているFP-3やディレクトリンク、パワービジョンなどのフラッシュチューニングデバイスは、使い方は違うけれど、ノーマルのコンピューターを書き換えてセッティングするという点では実は同じもので、要はチューナーが使いやすいかどうかでしかないんだよね。まずはしっかりとした基準となるデータを当て込んであげて、それをベースにイジっていく。基準さえあれば確実で早く作業を行える。

西岡 そうですね。僕なんかはディレクトリンクでのノウハウが身についているから、一番使いやすいです。逆にお客さんは各ショップが得意としているデバイスを使ったチューニングをオーダーしてもらえれば、そのお店のベストなパフォーマンスが発揮されるってことですよね。

車両のオーナーがどんな乗り方をするのか、どのぐらいの頻度で乗るのかなどをヒアリングしたり、乗り方を見て、チューナーそれぞれが判断した乗り味に仕上げる。それが「味付け」だ。この味付けの加減は実際にチューナーがセッティングしたり、乗ったりすることで得た経験からフィードバックしている

栗原 普通に考えればね。ただ、西岡さんがシャシーダイナモを導入した時のように、手探りでチューニングを手掛けているショップなどは、毎回一からマスに数値を入れていくようなセッティングをしているところも少なからずある。それぞれのショップの考え方もあるし、否定はしないけれど、バイクに対するリスクも少なく、チューニング前よりも楽しいバイクに仕上げることがチューナーに求められていることだと思う。

西岡 まずは調子のいいバイクを作る。それはチューナーとしては最低限の条件。さらにそこからお客さんの要望や、どんな乗り方をするかによって、チューナーなりのアレンジ、つまり味付けをしていくのが次の段階ですね。

豊富な経験を積んだチューナーは、実際に乗ることでその車両をセッティングした人の意図が読み取れるという。今回西岡さんが乗ってきたスポーツグライドはマフラーに合わせてマイルドにセッティング、対する栗原さんは大排気量化したダイナを街乗り仕様にしたもの。ふたりとも実際に乗ることでそれぞれセッティングの方向性を言い当てていた

 

栗原 この味付けがチューナーとしての腕の見せ所。話が少し戻るけど、それってチューナーがセッティングの良し悪しを体感によって知っているかが重要だと思う。データ的には合っているけど、乗ってみると違和感があれば、その原因を探って調整するわけだから、探れる知識や経験がないとダメだっていうことなんだよね。

西岡 確かに。チューニングを始めた初期のころはそれがわからないから迷走していたんだと思います。数値的な正解と乗り味のギャップが何なのかわからなかったというか。でも数をこなしていく中で味付けの意味がわかってきてからは、自分のセッティングに自信をもてるようになりました。

栗原 この期間があったことが技術の熟成につながったのかもね。

西岡 まだまだです。でもユーザーには見た目はもちろん、走りもカッコいいハーレーを提供したいので。これからもチューニングは追求していきたいですね。

―― ありがとうございました。

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