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ハーレーの排気量、なんでこんなに大きいの!?【その1】

2022年モデルで新たに登場した「ST」に搭載されたエンジンは、なんと1923ccと、いくらなんでもやりすぎでは!? と勘ぐってしまうほど排気量が大きい。しかし、これもハーレーファンなら想定内だ。そもそもハーレーは高性能なバイクが求められた時代に、排気量を大きくすることで対応し、成功してきたという歴史がある。そう書くと乱暴に聞こえるかもしれないが、排気量を大きくすることで独特な乗り味が生まれ、それこそが今日まで親しまれてきた要因にもなっているのだ。

“時代遅れ”になりつつあったハーレー

高性能であることは、我々バイク好きにとってはとても重要なことだが、それはいつの時代も変わらないものでもある。1936年からOHV方式の空冷45度Vツインエンジンを一貫して市販車に搭載し続けているハーレーも、その当時は高性能であることを追求して誕生したものだ。しかし、1960年代になるとバイク好きが求める「高性能」がよりハイエンドなものになっていった。その最たる要因が、ハイパフォーマンスであることはもちろん、圧倒的に安価で購入できた「日本車」の存在だ。これによって並列4気筒などの多気筒エンジンに注目が集まり、昔ながらのVツインエンジンは時代遅れなものになりつつあったのだ。

市販車で初めてとなる直列4気筒エンジンを搭載して1969年に登場したホンダ「CB750four」。量産車で初めてディスクブレーキを採用するなど、最新の装備で人気を博した。その後1972年には、カワサキがCBを凌駕する900ccの排気量、そしてDOHC方式を採り入れた4気筒エンジンモデル「Z900RS(Z1)」を市場に投入。200km/hを超える最高速、そんなハイパフォーマンスなモデルがリーズナブルなプライスで販売されると、世界中の多くのバイクファンに受け入れられたのだ。

ホンダのCBは「OHC」を、カワサキのZ1は「DOHC」を採用した。OHVとは異なり、カムをヘッド上部に配置することで、OHCの場合はカムが直接ロッカーアームを、DOHCの場合は直接バルブを押すため伝達ロスが少ないレスポンスに優れるほか、高回転までよく回るエンジンにできる。

「ショベルヘッド」の時代から排気量を拡大

1950年代後半からアメリカで主要都市を結ぶインターステートハイウェイ(州間高速道路)網の整備が急ピッチで進められ、その整備が整ったことで1970年代には巡行速度もアップしつつあった。そのため日本車のような高性能なモーターサイクルが求められるようになったワケだ。当然ハーレーにもスピードが求められるようになったのだが、これに対し、ハーレー社は新型エンジンを開発するのではなく、既存のOHVエンジンのまま排気量アップで対応した。1977年に登場した「FXSローライダー(写真上)」は当初1200ccで販売されたが、1979年には排気量を1340ccに拡大したバージョンを追加。これが好評だったことから翌1980年に1200cc版は販売を終了している。

どうもアメリカでは、単純にパワーを求めるなら“排気量の拡大こそが近道”と考えられているフシがある。そのことを如実に表しているのがアメリカのスポーツカーだ。道路網の発展からクルマの世界でも高性能化が求められ、1950~1970年代は「パワーウォーズ」と呼ばれる事態に発展。各メーカーから大排気量モデルが誕生し、大きなもので排気量は8000ccまで拡大した。それが常識となっていたお国柄だからこそ、ハーレー大排気量化の道筋はいたって自然だったと考えられる。

大排気量化で誕生した“ドコドコ感”の強いハーレー

1200ccのボア×ストロークは【87.3mm×100.8mm】だったが、1340ccでは【88.8mm×108.8mm】となった。この数値から気がつくのはボアも拡大されているものの、圧倒的にストロークが長くなったことである。このロングストローク化によって“中低速でのトルク感”が増し、いわゆる“ドコドコ感が楽しい”エンジンへと進化した。日本車などのハイパフォーマンスなバイクが注目された時代に解雇主義的なハーレーのOHVエンジンが生き残ってこれたのは、この独特な乗り味を手に入れたからと考えられる。

ここで補足しておきたいのが、ハーレーが採用し続けている「OHV(オーバーヘッドバルブ)」というバルブ駆動方式だ。バルブがヘッド上になく、エンジン横に取り付けられていたそれまでの「サイドバルブ」方式からバルブをヘッド上に配置することで、エアフロ―性能に優れるほか、燃焼室をコンパクトに作れる関係から圧縮比を高めることができた。サイドバルブよりも高回転の追従性は高いが、カムが腰下にある関係から、OHCやDOHCに比べればそこまでは回らない。

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